労働生産性を上げること

 生産性とは投入資源と成果との割合を示す指標ですが、労働生産性といった場合、付加価値額を労働者数(あるいは労働総時間数)で除した値を指しています。

 日本生産性本部が2018年4月に公表した研究成果によると、アメリカの労働生産性の平均値と比較し、製造業では67%、サービス業では50%と日本の労働生産性が著しく低いことが指摘されています。

https://www.jpc-net.jp/study/sd7.pdf

 付加価値額とは、売上高(生産額)と外部から購入した費用(原材料費、外注加工費、商品仕入額、動力費など)を除いた額です。様々な計算方法がありますが、中小企業庁では、営業利益+人件費+賃借料+租税公課という式を使っています。

 労働生産性を高めるためには、付加価値額を増加させるか、労働時間を短縮するかということになるのですが、他の条件を変えずに付加価値額を増加させるとすれば、単に働く人が忙しくなるだけと考えがちです。

 日本の製造業が世界を席巻していた頃、その現場ではギリギリと原価低減の努力を重ねるとともに、製造現場の効率を少しでも上げるべく、5S活動やQCサークルなどで「カイゼン」を重ねていました。

 製造業の現場は、自らの活動を計画しコントロールしやすいためにこのような改善活動がやりやすかったという事情もあるのではないでしょうか。

 一方、働く人と顧客との接点で価値を生むようなサービス業では、人によってサービスレベルにばらつきが多いこと、コントロールできない顧客との関係が複雑なため、「カイゼン」は製造業と比較すると限定的だったのだと思います。

 サービス業において労働生産性を上げる必要があるからといって、目の前のお客様と関係なく自分の効率だけを上げるようなことをしても、結局はお客様が離れていってしまい、売上や利益の減少を招くようでは本末転倒です。

 自らの生産性を向上させる上で考えるべきは、直接的にお客様に価値を提供していない活動に注目して効率化を図ることです。

 企業にとって労働生産性を上げることは、好ましいことですが、働く人にとってはどのような意味を持つのでしょうか。