BCPを作る際に考えざるを得ないこと
BCP(事業継続計画)やその簡易版である「事業継続力強化計画」を策定するにあたっては、その策定目的を考える必要があります。
策定目的とは、「危機が訪れた際、なぜわが社はいち早く事業を再開しなければならないのか」に答えるものです。
これは、会社の存在意義にかかわる問いで、日常業務の連続ではなかなか考えが及ばないものでもあります。
その目的を真摯に時間をかけて考え、それを実際の活動に落とし込んでいくことが、いざ危機が訪れた際に「いち早く立ち上がってほしい」と期待される会社づくりの端緒となるのではないでしょうか。
阪神淡路大震災の絶望を乗り越えて学んだ「本当に強い経営」を経営者自身が紹介している「人に必要とされる会社をつくる」(万協製薬株式会社代表取締役社長 松浦信男氏著)から、「はじめに」の一部をを紹介します。
阪神淡路大震災の被災地神戸市長田区で、父が創業し35年間神戸の地で営業を続けていた会社は、一瞬にして崩壊、操業不能となる。昨日まで一心同体だと思っていた社員は、みんなで会社を立て直そうという私の呼びかけに耳を貸そうとせず、無情にも去っていった。支援を求めた唯一の取引先からは、慰めの言葉どころか、「おたくが無くなっても痛くも痒くもないから」と廃業を勧められる。すべてを失ったのに、誰も助けてくれない。私も会社も、実は誰からも必要とされていなかった。何の準備も心構えもない自分にいきなり突き付けられた現実は、あまりに過酷だった。
私をこんな目に合わせた世の中に「復讐」してからでないと、死んでも死にれないと思い、地獄のような日々から復活を果たした。必要な人間になってみせる。ないと困る会社を作ってやろうじゃないか。今度同じようなことが起こったらその時は、お願いだから辞めないでくれ、何としても事業を続けてほしいと、向こうに言わせてみせる。
社員に必要とされる会社になるために、社員一人一人が毎日出社したいと思うような会社にする。地震や災害が起こった時、社員の命を守る仕組みが完璧に整っていることも重要だ。社員を危険にさらしておいて平気でいる会社に社員が愛情を持つはずがない。顧客に必要とされる会社になるために、相手の立場で発想する。地域社会から必要とされるために、どうしたら自分たちのいる地域がもっと住みやすくなるかを、地域住民と一緒になって考えるのは会社の義務なのである。
これらのことを実現するために、経営の安定が不可欠である。私が、強い経営の仕組みづくりに徹底的に取り組んできたのは、それがないかぎり、社員や顧客や地域から必要とされるのは無理だからだ。
1995年1月17日は、私にとって今でも人生最悪の日だ。しかし、私の今の人生は、その最悪の日からスタートしたと言ってもいい。私が、どん底から這い上がってこれたのは、人に必要とされるという方向に、生き方と経営の仕方をシフトしたからである。