論語と算盤とSDGs
2024年から使われる一万円札の肖像に渋沢栄一が選ばれたとニュースになっていました。「論語と算盤」は渋沢栄一の最も有名な講演録ですね。
「現代語訳 論語と算盤」守屋淳(訳)から、利益と社会とのバランスについての記述を抜き出してみます。
本当の経済活動は、社会のためになる道徳に基づかないと、決して長く続くものではないと考えている。強い思いやりを持って、世の中の利益を考える事は、もちろん良いことだ。しかし同時に、自分の利益が欲しいと言う気持ちで働くのも、世間一般の当たり前の姿である。
その中で、社会のためになる道徳を持たないと、世の中の仕事と言うのは、少しずつ衰えてしまうということなのだ。(p86)
利益を得ようとすることと、社会正義のために道徳にのっとるという事は、両者バランスよく並び立ってこそ、初めて国家も健全に成長するようになる。(p88)
私が常に希望しているのは、「物事を進展させたい」「物の豊かさを実現したい」と言う欲望を、まず人は心に抱き続ける一方で、その欲望を実践に移していくために道理を持ってほしいと言うことなのだ。
その道理とは、社会の基本的な道徳をバランスよく推し進めていくことに外ならない。(p89)
いかに自分が苦労して気づいた富だといったところで、その富が自分1人のものだと思うのは、大きな間違いなのだ。
国家社会の助けがあって、初めて自分でも利益が上げられ、安全に生きていくことができる。これを思えば、富を手にすればするほど、社会から助けてもらっていることになる。
だからこそ、この恩恵にお返しをすると言う意味で、貧しい人を救うために事業に乗り出すのは、むしろ当然の義務であろう。できる限り社会のために手助けしていかなければならないのだ。(p96)
お金を大切にするのはもちろん正しいことだが、必要な場合にうまく使っていくのも、それに劣らず良いことなのだ。よく集めて、よく使い、社会を活発にして、経済活動の成長を促すことを、心ある人はぜひとも心がけて欲しい。
お金の本質を本当に知っている人なら、よく集める一方で、よく使っていくべきなのだ。よく使うとは、正しく支出することであって、良い事柄に使っていくことを意味する。(p102)
企業が利益を得て経済的に持続可能であって、かつその存立基盤である社会も持続可能であることの両方がバランスよく実現していくことは、「環境、社会、経済が将来にわたって持続可能であること」を目指すSDGsとまさに一致していると思います。
世界が一致してSDGsを進めていこうというこの時期に、渋沢栄一が1万円札の肖像画に選ばれたのも実に良いタイミングではないでしょうか。