ドプリー:今日働く人たちにとって最も重要なものが、自己実現の機会です。そして、働きがいのある共同体の一員になる機会です。意味あることに関わりを持つ機会です。何かの一員であることの機会です。機会というものを考えずに活力ある組織を作ることはできません。
Opportunity for self-realization is clearly one of the most important things that we seek today in our working lives. Opportunity for self-realization, for being part of a social body that is attractive and rewarding. Opportunity to be involved with something that’s meaningful. Opportunity to be an integral part of something. We do not develop vital surviving organizations unless we take into account these needs for meaningful work, for a chance at reaching our potential for good social relationships.
ドラッカー:今の若い人はやる気がないとこぼす前に、彼らが持っているものに目を向けなければなりませんね。彼らにしても貢献への強い欲求を持っています。しかし、組織のほうも彼らに要求すべきことがあるのではないでしょうか。
Instead of bemoaning that young people are lazy or self-centered, I think one says: what do they have? They have a tremendous desire to contribute. What is it that the non-profit institution can do to that newcomer, that young person, to acquire self-discipline?
ドプ:私としても、要求せずに失敗するよりは、要求しすぎて失敗するほうがよいと思います。組織としてはもっと失敗を許せなければならないと思います。
失敗は教育の一環です。多くを要求すれば、仕事の質は向上し人間の質も向上します。
I think it’s better to err on the side of being more demanding of a person than of being less demanding.
Mistakes are part of education with, of course, some exceptions. When we challenge people on the high side, the odds are much better that we’re going to get both better performance and more development of the person.
ドラ:ただし条件が二つあります。一つは失敗しても第二、第三のチャンスを与えることです。もう一つは、多くを要求するのであれば先生役を用意してやることです。この点についてはどうされていますか。
On two conditions, I would say, Max. One has to be willing to give the person who tries a second and perhaps even third chance. And then there has to be a mentor if you give that much load, that much demand, that much responsibility to beginners.
ドプ:リーダーたる者は、先生役という形での組織への貢献を高く評価するこということを、組織全体に知らせなければなりません。先生役を果たしてくれている人たちを埋もれさせてはいけません。
The leader better make sure that those people know how the leader personally feels about their contribution to the organization. That cannot slip by unnoticed.
「自己実現」は、マズローの欲求段階説の最上位に位置するということで有名な言葉です。自己実現への欲求とは、自分の持つ能力や可能性を最大限発揮し、具現化して自分がなりえるものにならなければならないという欲求とされ、いわば、人が生きていく意味をより高く求めると、その行動の動機は自己実現に帰結するというものです。
無給のボランティアによってその活動が支えられている非営利組織にとっては、それに参加すること自体が自分にとって意味のあることだと実感させ続けることが大事なことです。一方で 企業の場合には、労働の対価として給料を支払うので、働く人一人ひとりに対して機会を与えることが最上位の価値になるということは少ないと思います。
しかし、現代の社会では誰にも転職の自由があるので、その組織に対して給料だけではない自らの存在意義を求めることも多く、優秀な人ほどそれが満足できる場所に移る(転職する)ということが頻繁に起こるようになっています。
そのため、非営利組織のみならず、企業においても一人ひとりの自己実現欲求に応えられる組織を作ることは、以前よりも重要性を増していると言えると思います。
上記の会話ではこれからの組織が持つべき姿勢として、失敗を許し次のチャンスを与える、先生役を用意するという二つの見本を示してくれています。
2013/11/22