マックス・ドプリー:大手家具メーカー、ハーマン・ミラー社会長、ホープ大学評議会会長、フラー神学校理事、著書『リーダーシップ』(1989年)
ドラッカー:マックス、あなたは人を育てることに優れているとの評判です。
Max, you have the reputation of being the leader in developing people.
ドプリー:まず、人はそれぞれがかけがえのない存在です。そこからリーダーの責任が生じます。リーダーは人のおかげでその地位にあるのです。ボランティアは能力の発揮に力を貸してくれると思うからこそ、リーダーについていくのです。
We come to life with a tremendous diversity of gifts. I think from there, a leader needs to see himself in a position of indebtedness. Leaders are given the gift of leadership by those who choose or agree to follow. I think this means that people choose a leader to a great extent on the basis of what they believe that leader can contribute to the person’s ability to achieve his or her goals in life.
リーダーは組織からある能力を借りているのです。人を集める能力、資金を集める能力です。あるいは、伝統とか価値といわれるものです。それはリーダー自身が表明し、明確にし、決定し、仕事に反映させていく責任を負うものです。それらすべてが、人本位に考えるべきことなのです。
One relatively straightforward way of looking at it is that the leader owes certain assets to an organization.
In some organizations, that would be the ability to recruit the right people.
Another important asset is the ability to raise the necessary funds.
Another area isn’t quite as clear, and I would put that under the general heading of a legacy: the values of the organization.
The leader may not be the author of those values, but the leader is accountable for expressing them, making them clear, and ensuring to the people in the organization that the values will be lived up to in a way in which decisions are made.
An element that is clearly, to me at least, common ground is that this whole matter of people development needs to be oriented primarily toward the person.
ドラ:人を育てるのであって、仕事をどうこうすると言うことではないようですね。
You develop people, not jobs, is what you are saying.
ドプ:そうです。そして、人がすでに持っているものを使って人を育てなければなりません。人の才能と可能性を理解しなければなりません。
That’s right. We’re talking about building on what people are—not about changing them. To understand their gifts, to understand what their potential is.
組織では、どうしても設定した目標の達成に力を入れてしまいます。しかし人を育てると言う観点に立てば、目標自体がさらに高いものになり、組織全体の水準の向上に通じます。
We tend, in organizations, to put a lot of emphasis on the achievement of goals, but when we’re talking about the development of a person, we have a much higher aim. That attitude about people development, I believe, also applies, by the way, to the development of an organization.
ドラ:あなたは二つのことを見ておられるのではないでしょうか。人の才能、可能性、強みを見ておられる。と同時に、客観的なニーズ、客観的な条件、現実の機会も見ておられる。
Don’t you really look at two aspects? You look at the gifts of people, their potential, their strength, what they could be if only they used a little better what they have. But you also look at the objective needs, the objective requirements, the opportunities for accomplishment.
対談の相手が『リーダーシップ』という本の著者だけに、話題にはリーダーに関する内容が多く含まれています。
リーダーはついてくる者があって初めてリーダーになるのであって、一人だけではリーダーとはいえません。だからこそ、上記のようについてくる人が力を発揮できるように環境を整えることがリーダーとしての仕事の最も大切なことであると主張しているのです。
リーダーシップという言葉は、性格的なものや資質を指すようにも感じますが、ドプリーによればリーダーシップは仕事だと言っているようです。リーダーとしての能力は組織から借りたもので、それを発揮することが組織から期待されている仕事なのだということだと思います。
ドプリーはさらにリーダーの責任について、「人が自分の可能性をフルに発揮し、責任を果たし、自己実現できるよう権限を委譲しなければならない。それがリーダーの責任であり、人がリーダーに期待できることの一つです。」と述べています。
組織の代表たるリーダーは、組織の成果に関する目標と同時に人の可能性を引き出すことを目標に持つことによって、その両方を達成していかなければならない。またそうした姿勢によって人はついてくるのだということなのです。
2013/11/21