リーダーたる者の重要な仕事の一つが、個別的な問題と全体的な問題、短期的な問題と長期的な問題など、二つのもののバランスをとることである。
One of the key tasks of the leader is to balance up the long range and the short range, the big picture and the pesky little details.
全体に気を取られすぎれば、助けを待つ孤独な若者という個としての人間の存在を忘れてしまう。
しかしこの種の過ちは、修羅場に数日あるいは数週間、あるいは一年間身を置くだけで直る。
One is the balance between seeing only the big picture and forgetting the individual person who sits there—one lonely young man in need of help.
That kind of failing is fairly easy to correct. Being on the firing line a few days, a few weeks, a year, usually does it.
逆に現場の仕事の虜になっても過ちを生む。むしろこちらの方が直すのに手間がかかる。非営利組織のリーダーの場合、他の組織や団体のために働くことによって、そのような事態を回避することができる。
The opposite danger is becoming the prisoner of operations. That’s much harder to avoid. The effective people do it very largely through their work in associations and other organizations.
難しいのは、集中と多様化のバランスである。最大の成果は集中することによってのみ手にできる。ただそこには、間違ったことに集中したままでいるリスクがある。あるいは大事なことを忘れるリスクがある。したがって多様な視点を確保しておかなければならない。
Which I think is even harder to handle, is the balance between concentrating resources on one goal and enough diversification. If you concentrate, you will get maximum results. Not only may you have chosen the wrong concentration, but—in military terms—you leave your flanks totally uncovered. But diversity can easily degenerate into splintering.
さらに重要なバランス、しかも対処の難しいバランスが、慎重さと迅速さのバランスである。タイミングはきわめて重要な要素である。早く結果が知りたくてあまりにも早く大根を抜く人がいる一方、いつになっても抜けない人がいる。
The even more critical balance, and the toughest to handle, is between being too cautious and being rash. Finally, there is timing—and this is always of the essence. You know the people who always expect results too soon and pull up the radishes to see whether they’ve set root, and the ones who never pull up the radishes because they’re sure they’re never ripe enough.
このセクションの最後には、「これらバランスにかかる意思決定こそ、非営利組織が優れたリーダーを持たなければならない理由である。」と書かれていますが、これも非営利組織に限ったものではないと思います。
「選択と集中」によって事業を再構築するとしても、一点賭けではリスクが大きすぎるので、選択されなかった事業をすべて捨てるということはほとんどないでしょう。
企業のマネジメントについて書かれている「現代の経営」という著書でも、「マネジメントとは、事業上の多様なニーズと目標をバランスさせることである。」としていますので、どのような会社や組織にとっても、事業を継続していくならばバランスの問題はついてまわります。
また、リスクの見極めが重要であることも述べられています。「ここで考えるべきは、元に戻すことができるかである。」
もちろん誰でも考えることでしょうが、どの程度の確かさをもって判断できるかが、優れた挑戦的なリーダーと単なる無謀なリーダーとを分けるのかもしれません。
2013/11/16