あまりに多くの決定が立派な意図に終わっている。原因は四つある。
There are four common causes for this.
第一に、決定を行ってから売り込もうとするからである。欧米では決定は早く行う。そのあとで関係者に売り込む。それでは3年かかる。売り込めたときには陳腐化している。
この点に関しては日本から多くを学ばなければならない。彼らは決定の前に実行を組み込む。
One is that we try to “sell” the decision rather than to “market” it. In the West, we tend to make the decision fast—and then we start to “sell” it to the people in the organization. That takes three years, and by the time the decision has been “bought,” it has become obsolete.
Here we can learn from the Japanese. They build the implementation in before they make the decision.
第二に、直ちに新しい政策やサービスを全面的に実行に移そうとするからである。テストの段階をとばしているのである。企業ではテストの段階をとばせば失敗することは昔から明らかにされている。
A second way to lose the decision is to go systemwide immediately with the new policy or the new service. This jumps the testing stage. In industry we learned long ago that we are going to be in trouble if we jump the pilot stage.
第三に、担当者を決めていないからである。目標、期限について誰かが責任をもたなければならない。決定に実を結ばせるのは決定そのものではない。人である。
The third caveat: no decision has been made until someone is designated to carry it out. Someone has to be accountable—with a work plan, a goal, and a deadline. Decisions don’t make themselves effective; people do.
第四に、誰が何をするかを考え抜いていないからである。実行すべき人たちにいかにして決定の内容を理解させるか、いかなるトレーニングが必要か、いかなる道具が必要かを考えておかなければならない。
Finally—common mistake number four—I’ve seen wonderful decisions come a cropper because nobody really thought through who had to do what. In what form should the decision be communicated to each person who has to implement that decision so that he or she can actually act? What training does each need? What tools?
日本から多くを学べというのは、いわば「根回し型」の意思決定プロセスのことを言っています。公式な会議の前に様々な意見を取り入れ選択肢を検討し尽くし、会議の場では全員一致の結論となるという方式です。
会議で意見を戦わせるのと違って不透明な感じがしますが、ドラッカーはマネジメントを行う人は真摯さを備えていることを条件としているので、根回し型でも公正さが失われないことを前提としています。
成果に近いかどうかを考えたとき、日本型の意思決定プロセスは効果的だと考えたのだと思います。
さて、成果を上げる意思決定と題した本章は次の記述で結んでいます。
「非営利組織の最大の弱みは、自らの無謬性への確信が強いことにある。企業では間違いはいくらでもあることを知っている。ところが、非営利組織ではなぜか間違いが許されない。そのため、何かがうまくいかなくなると、検察官が登場して「誰の責任か」と聞く。そうではなく「誰が撤回するか」「誰がいかに立て直すか」と聞かなければならない。」
2014/1/4