意見の対立を勧めるもう一つの理由は、あらゆる組織が反体制派なるものの存在を必要とするからである。
変化が必要になったときには、進んで変化を支持することのできる者が必要となる。イエスマンばかりでは困る。望むべくは組織内で敬意を払われる反体制派がほしい。
A second reason to encourage dissent is that any organization needs a nonconformist.
If and when things change, it needs somebody who is willing and able to change. You don’t want only yes-men or yes-women. You want a critic—and one the organization respects.
争いをなくすには、意見の対立を利用することが一つの方法である。反対意見を求めるならば、意見を聞いてもらえるとの確信を植えつけることができる。同時に反対意見の者がどこにいて、何に反対しているかがわかる。そして多くの場合、反対者が受け入れてくれるような調整を行うこともできる。
You use dissent and disagreement to resolve conflict. If you ask for disagreement openly, it gives people the feeling that they have been heard. But you also know where the objectors are and what their objections are. And in many cases you can accommodate them, so that they can accept the decision gracefully.
反対者のほうも、全面的に納得するまでは行かなくとも、意思決定の論拠を理解できる。意見が違っただけである。意見の対立は防げなくとも、争いはなくすことができる。
That also enables them very often to understand the arguments of the winning side. They only differ. You do not prevent disagreement, but you do resolve conflict.
前の章で人はそれぞれ違う強みを持っており、それを組み合わせて組織の成果につなげよという話がありましたが、強みも違えば役割も違う人たちが集まっている組織ですから、意見の対立があって当然と考えるべきです。
もし意見の対立がないとすれば、専制による恐怖政治が敷かれているとか、参加者が無関心になっているなど、組織が衰退していく予兆とも考えられます。
だからこそ、ドラッカーは極端な表現で「反体制派(non-conformist)の存在が必要だ」としたのでしょう。
このセクションの中で、「争いをなくすことはできない。しかし関係のないものにすることはできる。」という記述があります。意見の対立は推奨すべきものだが、組織の中での争いは不要だとしたものです。
ドラッカーの著書「現代の経営」には、「「何が正しいか」よりも「誰が正しいか」に関心を持つ者を昇進させてはならない。」という記述があります。
組織内の争いが続くと「誰が正しいか」に傾倒してしまうので、それよりも意見の対立を公にすることで「何が正しいか」を皆で考えるほうがよほど建設的だということなのだと思います。
2014/1/3