フランクリン・D・ローズヴェルトを初めとする一流の意思決定者は、シンプルなルールを持っていた。重要なことで最初から同意が得られている場合には敢えて意思決定はしないというルールだった。全員が考える時間を持てるように、決定を先延ばしした。
All the first-rate decision makers I’ve observed, beginning with Franklin D. Roosevelt, had a very simple rule: If you have consensus on an important matter, don’t make the decision. Adjourn it so that everybody has a little time to think.
重要な意思決定はリスクを伴う。当然意見の対立があるはずである。最初から全員が賛成ということは、誰も何も考えてきていないことを意味する。
Important decisions are risky. They should be controversial. Acclamation means that nobody has done the homework.
対立する意見があった場合、いずれが正しいかを論じ合うのではなく、いずれも正しいことを前提としなければならない。それぞれの意見は、いかなる問題に答えようとしているのか。そう考えることによって問題の全容が見えてくる。
Instead of arguing what is right, assume that each faction has the right answer. But which question is each trying to answer? Then, you gain understanding.
決定を間違うと組織そのものが危殆に瀕する場合、あるいは一度行動してしまえば元に戻せないという場合には、特に感情的になりやすい。だがそのようなときこそ、意見の対立を建設的にとらえ、相互の理解と敬意の鍵として利用しなければならない。
Emotions always run high over any decision in which the organization is at risk if that decision fails, or in one that is not easily reversible. The smart thing is to treat this as constructive dissent and as a key to mutual understanding.
会議でオープンに議論し結論を出すというスタイルが前提となっている記述ですが、日本型意思決定ともいえる「根回し」によるスタイルだと、ちょっと様子が違います。反対意見は会議を開く前に検討し尽くされているので、会議の場では反対意見が出ないということが多くあるからです。
「根回し」が済んでいるのに、上記に倣って「反対意見がないなら決定しない」というのは趣旨が違います。
ドラッカーが述べているのは、反対意見を持つ人がどんな現実を見ているのか、何を解決したくて反対意見を持っているのかを良く理解して、それらすべての意見をふまえた上で意思決定を行わなければならないという意図でしょう。
この段階が会議の前に行われる 「根回し型」でも、反対意見を尊重しなければならないことは同じです。「根回し済み」で会議が行われる場合には、反対意見について検討し尽くしたかどうかをチェックするということが重要になってくると思います。
ドラッカーはこの日本的な意思決定スタイルを好意的に評価しています。二つ後のセクションに次のような記述があります。
「日本では決定の影響を受ける者はすべて、決定前に意見を求められる。このプロセスは恐ろしく遅く見える。まるで岩登りのようである。しかし日本では、ひとたび決定が行われるやもはや売り込みを行う必要はない。翌日には全員が決定の意味を知り、動き始めている。」
2014/1/2