コトラー:マーケティングには、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの三つの大きなステップ、STPがあります。
Marketing is now thought of as a process of segmenting, targeting, and positioning – I call it STP marketing.
ポジショニングとは、マーケットに対し自分たちの非営利組織をどう位置づけるかです。どう差別化するかです。
Positioning raises the question: How do we put ourselves across to a market we’re interested in? How do we stand out in some way?
あらゆる人にあらゆることを約束することはできません。しかしそのためには、自らの競争上の優位性を知らなければなりません。
優位性は、自らの強みを伸ばし、それを狙っているマーケットにぶつけることによって得られます。
You cannot be all things to all people. So most organization engage in the search for their own uniqueness, what we might call a competitive advantage or advantages.
That comes by cultivating certain strengths and putting them across an meaningful to the market you’re going after.
ドラッカー:第一歩は、マーケット区分つまりセグメンテーションですね。自らの強みを誰にマーケティングするかを徹底して分析しなければならない。
So, one of the first steps in marketing is to define its markets, its publics. Think through to whom you have to market your product and your strengths.
コ:教会を例にとってみましょう。教会は救いを求める人一人ひとりを相手にしなければなりません。したがって、きわめて多様性に富んだ組織たらざるを得ません。
ところがもう一方において、マーケティングの考え方からすれば、顧客を分類した上でターゲットを絞り込んだほうが良いわけです。
Let’s take churches, for example. On the one hand, a church should go after every person who wants religious experience, and so on. It should therefore be a very diverse institution.
On the other hand, marketing would suggest that it would be more successful if it defined its target group.
そこで私がオーケストラ化と呼ぶものが必要になります。いろいろなグループに分類した上で、組織の一体化を図るのです。
And there’s a problem of what I call market orchestration. It’s not everyone; but it’s more than one group. The church needs well-defined groups who are looking for one or more particular satisfactions.
ド:つまりミッションは全員に共通である。しかし成功するためには、戦略を考え、主たるターゲットを攻めなければならない。
ターゲットによって活動の内容を変えていかなければなりません。
So the mission may well be universal. And yet to be successful, the institution has to thing through its strategy and focus on the main target groups in marketing and delivering its service.
So each church would then have to change what it does to serve its high potential market.
前のセクションでは五つのプロセスを紹介していましたが、それらのうちマーケットリサーチと仕事の設計の二つを除いた三つのステップが特に大きいとして取り上げたもののようです。
大義を抱く非営利組織においても、その関係者を分類し、分類されたセグメントごとにどのような特徴を持っているのか、組織に対してどんなことを期待しているのかを分析するというセグメンテーションが最初に必要だとしています。
次に、自らの強みがそれらの期待に応えられるのであればそのセグメントをターゲットとするが、強みを生かせないのであればターゲットから外すという絞り込みが、つまりはターゲティングです。
一見同じように困っている人を目の前にして「あなたは私の顧客ではない」と言わなくてはらないのですから、非営利組織にとってはつらい選択になるかもしれません。しかしコトラーが上記で述べているように「あらゆる人にあらゆる約束はできない」と割り切ることによってこそ、優位性を獲得できるのでしょう。
「多様性に富んだ組織」という言葉が出てきますが、これはマーケティングの結果、複数の性質の異なるターゲットを選択した場合に、それぞれのターゲットに向けた異なる活動をする必要があり、そのため、組織自体が多様性を持っているように見えるようになるということなのだろうと推測します。
あるセグメントに対しては一対一の時間をかけた対面での手厚いサービスを行う一方で、別のセグメントに対してはメールによる簡易なやり取りでサービスを提供するなど、表面的には不公平な活動を行っているかのように見えることが、ターゲット別戦略すなわち多様性ということになるのではないでしょうか。
2013/12/10