新しいものを始めるにあたっては、誰もが犯しやすいいくつかの間違いに気をつけなければならない。
There are a few common mistakes in doing anything new.
一つ目の間違いは、アイディアから一挙に全面展開に入ることである。テストの段階すなわちパイロット(試行)の段階を飛ばしてはならない。
One is to go from idea into full-scale operation. Don’t omit testing the idea. Don’t omit the pilot stage.
二つ目は、自ら調べることをせずに、誰でも知っているとされていることを真に受けることである。通常誰でも知っていることは20年遅れである。
Don’t go by what “everybody knows” instead of looking out the window. What everybody knows is usually twenty years out of date.
三つ目は、独善である。新しいものには、考えていたところとは別のところにマーケットがある。
The next most common mistake is righteous arrogance. It’s an old rule that everything that’s new has a different market from the one the innovator actually expected.
四つ目は、根本的な見直しをせずに、取り繕いで済ませようとすることである。「もう手直しではだめだ、ズボンはつぎはぎだらけだ」といえることがトップの責任である。
Another common mistake is to patch up the old rather than to go all-out for the new. It is one of the crucial tasks of the executive to know when to say, “Enough is enough. Let’s stop improving. There are too many patches on those pants.”
うまくいかなくともばかな顧客の悪口を言ってはならない。「別のやり方があるかもしれない」といわなければならない。「これがわれわれのやり方だ」と言ってはならない。
If it doesn’t work, don’t blame the “stupid public.” Say instead, “Maybe this needs to be done differently.” Before you go into an innovative strategy, don’t say, “This is how we do it.”
「何が必要か考えよう。知っていると思っていることから始めるのはやめよう。知らなければならないことから始めよう」と言わなければならない。
Say, “Let’s find out what this needs. Let’s start out with what we need to learn.”
二つ目の間違いとされていることは、私にはうまく理解できません。新しいものを始めるのに、そんなことは誰でも考えつくから自分には無理だと考えることを間違いだと言っているのか、20年遅れのことを新発見だと勘違いしないようにせよと言っているのか、あるいは、さらに別のことを言っているのかもしれません。
三つ目の独善とは、前のセクションで「イノベーションは成功を信じているものに任せよ」と言っているように、強い信念が必要ではありますが、それだけに独善に陥りやすいということです。
マーケティングを行い、ニーズを認知し新しい商品開発やサービス開発を行って、これがあなたの欲求を満たすものですと自信を持って送り出したものが、ターゲット外の顧客が購入したときに、それはこの商品(サービス)の想定顧客ではないと無視してしまうようなことを独善だと言ったものです。想定には誤りがあることを謙虚に認め、別のところにマーケットがあったなら、それに対応するように変化することを嫌うなということだと思います。
四つ目は、サンクコストにつながる考え方だと思います。外界の変化に対応するために、それまで行っていた仕事を少し変えることによって対応するということは通常業務の範囲でしょう。最初から仕事を作り直すより小さいコストで対応できるならば、修正で済ませようというのが合理的です。しかし、それが積み重なってくると、変化に対応するためのコストが大きくなってきます。
本当は最初から仕事を作り直したほうが良いのに、それ以前に修正にかけたコストが大きいがために、それを捨てられないということが起きがちです。これをサンクコスト(埋没費用)と言い、現場では変えられないので、トップがそれを認識して決断しなければならないということです。
2013/12/8