機会のターゲット

フランシス・ヘッセルバイン:1976年から90年まで全米ガールスカウト協議会専務理事、その後ドラッカーNPO財団専務理事

ドラッカー:アメリカのガールスカウトには地域別の協議会が335あります。フランシス、その連合体である全国協議会であなたが始めたプログラムのうち一番印象的なものは何ですか。
Frances, of all the new programs you have successfully introduced into your 335 Girl Scout Councils around the country in thirteen years as National Executive Director, which is the one closest to your heart?

ヘッセルバイン:デイジースカウトです。5歳児のためのプログラムです。
I would have to say the Daisy Scouts. This is our newest program for little girls, five years old or in kindergarten.

:しかし、それはガールスカウトの伝統にはなかったことでしょう。
That was quite a departure, wasn’t it, from the Girl Scout tradition?

:もともと7歳から17歳を対象にしていました。5歳児でも専用のプログラムを作ってやればグループ活動ができることがわかったわけです。
Yes. Previously, we served girls from seven through seventeen. It became clear that young girls of five were ready for a Girl Scout program designed just for them.

:各地の協議会の反応はどうでしたか。
Were your Councils enthusiastic about the change?

:すぐに乗ってきたのは70ほどでした。それぞれの協議会は独立しており、選択権を持っていますので、デイジースカウトを始めるか様子を見るかは自由でした。
I’m afraid that only 70 of the 335 were enthusiastic, wanted to move right then. The Councils are chartered, and they have their own volunteer board of directors. So in this case, they really had a choice—move with us or stand back and wait.

:70から200になるにはどのくらいかかりましたか。
How long did it take to go from seventy to two hundred Councils?

:半年ほどです。それらの協議会では一年後にはデイジースカウトが最も活発なプログラムになっていました。3年後にはアメリカ全土に広がりました。ティーンエイジャーの女の子の相手をすることは苦手でも、5歳の女の子のために働くのは好きだというボランティアは大勢います。そういう人たちに活躍の場を提供できることに気がついたのです。
That took about six months. Within a year the Daisy Scouts were established as one of our most successful endeavors. Three years later, the Daisy Scouts were everywhere in this country. Councils discovered they can offer leadership positions to young women and older women who were reluctant to work with teenagers but who find working with five-year-olds an adventure.

:あなたたちはマーケット志向だったわけですね。出かけて行ってニーズを調べた。ガールスカウトが生まれた75年前とは状況が変わっていたのでマーケット中心のプログラムを練り上げた。
First, you were market-driven. You went out and looked at the needs, the wants of the community you serve, and they had changed since you first started seventy-five years ago. So you developed this service that was market-driven.

次に実際に変化を起こすために、私が「機会のターゲット」と呼ぶものに働きかけた。つまりデイジースカウトに関心を持つ協議会を見つけ一緒に働くことにした。関心を示さない協議会のことはあまり気にしないことにした。
And the next thing I think you told us is that to make the change, you looked for what I call targets of opportunity—the Councils who really wanted this and were ready to go to work. You didn’t worry about the Councils that were non-believers.


第3章と第4章は、対談の記録です。

最初は全米ガールスカウト協議会という非営利組織でのリーダーが、新しい活動プログラムを全国に広げていったという話からです。

全国協議会が新しい活動プログラムを作ったとしても、地域別協議会がそれを受け入れることを強制はできないですから、地域別協議会に受け入れられるようマーケティングを行って、しかも、すべてをターゲットとせずに受け入れられる一部の協議会と事業を始めたという内容です。

非営利組織には多数の利害関係者がいて、そのすべてが拒否権を持つという特徴がありますが、新しい事業を始めるときに全員の賛成を取り付けることなどできません。しかし、社会は変化し、組織はその変化に対応していかねば衰退を招く一方になってしまいます。

現場には新しいニーズがあり、その変化に対応することが必要ならば、小さく始めることがよいという事例だと思います。

2013/11/1

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