必要とされる時間 the Time Demand on the Execute①

私の観察では、成果を上げるものは仕事からスタートしない。
時間からスタートする。
計画からもスタートしない。
時間が何に取られているかを明らかにすることからスタートする。
次に時間を管理すべく、時間に対する非生産的な要求を退ける。
そして最後にそうして得られた自由になる時間を大きくまとめる。 (最後に「自由裁量の」時間を可能な限り大きく連続したユニットとして統合する。)

Effective executives, in my observation, do not start with their tasks.
They start with their time.
And they do not start out with planning.
They start by finding out where their time actually goes.
Then they attempt to manage their time and to cut back unproductive demands on their time.
Finally they consolidate their “discretionary” time into the largest possible continuing units.

  • attempt:〈困難危険な事など〉を試みる;〖attempt to do〗…しようとする
  • cut back:【人数金額などを】削減する, 切り下げる «on»
  • consolidate:〈地位権力など〉を固める, 強固にする、〈複数の会社組織仕事など〉を統合[合併]する
  • discretionary:(主に権威者による)自由裁量の[による], 任意の

時間は特異な資源である。
主要な資源のうちでは、資金は豊富にある。
経済発展や経済活動の阻害要因になっているものは、資金供給ではなく資金需要であるとさえいってよい。
もう一つの資源である人材は、雇うことができる。(十分な良い人材を雇えることは稀であるが)
ところが時間は、借りたり、雇ったり、買ったりして増やすことができない。

Time is also a unique resource.
Of the other major resources, money is actually quite plentiful.
We long ago should have learned that it is the demand for capital, rather than the supply thereof, which sets the limit to economic growth and activity.
People—the third limiting resource—one can hire, though one can rarely hire enough good people.
But one cannot rent, hire, buy, or otherwise obtain more time.

  • plentiful:(十二分なほど)たくさんの, 豊富な(abundant, ample, copious)
  • thereof:〖名詞の後で〗それの, その
  • hire:〈人〉を雇う、〈物〉を賃借する
  • obtain:〈物事〉を入手する, 獲得する, 取得する

時間はあらゆることで必要となる。
時間こそ真に普遍的な制約条件である。
あらゆる仕事が時間のなかで行われ、時間を費やす。
しかしほとんどの人が、この代替できない必要不可欠にして特異な資源を当たり前のように扱う。
おそらく時間に対する愛情ある配慮ほど成果をあげている人を際立たせるものはない。

Everything requires time.
It is the one truly universal condition.
All work takes place in time and uses up time.
Yet most people take for granted this unique, irreplaceable, and necessary resource.
Nothing else, perhaps, distinguishes effective executives as much as their tender loving care of time.

  • take place:〈事が〉起こる, 発生する, 〈行事などが〉行われる
  • take A for granted:A〈事物人など〉を当たり前[当然]とみなす[考える]; (当たり前として)A(の存在助力努力など)を評価[考慮, 感謝]しない, 軽視する (!Aが長いときはgrantedの後に置く)
  • distinguish:〈人が〉〈複数の人物事〉を識別する;〈人物事〉を特徴づける; 際立たせる

われわれはどのように時間を過ごしたかを記憶に頼って知ることはできない。

If we rely on our memory, therefore, we do not know how time has been spent.

  • rely on A :〈人が〉 «…を求めて» A〈人物事〉を頼りにする, 信頼する, 当てにする

記憶自慢の人に時間をどう使っているかをメモしてもらい、そのメモを何週間か預からせてもらう。
その間実際に時間の記録を取ってもらう。
思っていた時間の使い方と実際の記録は似ていたためしがない。

I sometimes ask executives who pride themselves on their memory to put down their guess as to how they spend their own time. Then I lock these guesses away for a few weeks or months.
In the meantime, the executives run an actual time record on themselves.
There is never much resemblance between the way these men thought they used their time and their actual records.

  • in the meantime:その間に、そうしているうちに、それまでは
  • resemblance: «…との/…の間の» (外見上の)類似(点), 似ていること «to/between»

時間を管理するには、まず自らの時間をどのように使っているのかを知らなければならない。

The effective executive therefore knows that to manage his time, he first has to know where it actually goes.


 いよいよ成果を上げる第一の習慣、「時間を管理する」に入りました。

 PDCAという言葉があります。元々は工場における継続的な品質向上を行うマネジメントサイクルです。「計画Planー実行Doー確認Checkー改善Action」の頭文字ですが、これは「計画」から始まっています。

 ドラッカーは、「仕事についての助言は、計画せよ、から始まる。もっともらしく思えるが、問題はそれではうまく行かないところにある。計画は紙の上で消える。良き意図の表明に終わる。実行されることは稀である。」と、計画からスタートしても成果を上げられないと明言しています。

 スタートは時間の記録です。「記憶」ではなく「記録」せよ、ということを例を挙げて述べています。その次に時間の整理、そして時間をまとめるという三つのプロセスを示しました。

 自分の予定表や手帳などを見ても、会議など人と時間を合わせる必要のあるイベントは記録してあるのですが、それ以外の時間をどのように使っているかを記録している人は少ないのではないでしょうか。

2013/4/30
update:2015/9/8

必要とされる時間 the Time Demand on the Execute②

時間を無駄に使わせる圧力は常に働いている。
何の成果ももたらさない仕事が時間の大半を奪っていく。(マネジャであろうとなかろうと、いかなるエグゼクティブも、全く成果に貢献しないことに時間の大半を費やさなければならない。)
ほとんどは無駄である。
地位が高くなれば、その地位がさらに時間を要求する。

There are constant pressures toward unproductive and wasteful time-use.
Any executive, whether he is a manager or not, has to spend a great deal of his time on things that do not contribute at all.
Much is inevitably wasted.
The higher up in the organization he is, the more demands on his time will the organization make.

  • inevitably:必然的に, 必ず; ⦅おどけて⦆(結果的に)予想通り

仕事のほとんどは、わずかの成果を上げるためでも、かなりのまとまった時間を必要とする。
細切れでは意味がない。
何もできず、やり直さなければならなくなる。

Most of the tasks of the executive require, for minimum effectiveness, a fairly large quantum of time.
To spend in one stretch less than this minimum is sheer waste.
One accomplishes nothing and has to begin all over again.

  • fairly:〖形容詞副詞を修飾して〗まあまあ, 結構; かなり (!(1)veryほど強意ではない. (2)通例好ましい性質状態を表現する; 否定文では用いない;
  • quantum:量子、(特定の)量, (賠償金の)規定額, 割当金; 分け前.
  • sheer:まったく、まともに
  • accomplish:〈人が〉〈仕事偉業など〉を成し遂げる, 達成する, 〈任務〉を完遂する, 〈変化目標など〉を遂げる

成果を上げるには大きな固まりの時間が必要である。(すべてのナレッジワーカー、特にすべてのエグゼクティブが成果を上げるためには、時間をかなりの大きな塊に解決できることが必要である。)
いかに総量が大きくとも細分化していたのでは役に立たない。

To be effective, every knowledge worker, and especially every executive, therefore needs to be able to dispose of time in fairly large chunks.
To have small dribs and drabs of time at his disposal will not be sufficient even if the total is an impressive number of hours.

  • dispose of A:A〈不用物など〉を処分[処理]する、A〈問題課題疑問など〉を解決する, 始末する, 片付ける
  • chunk:大きな塊, 厚切り;
  • dribs and drabs:ほんの少数ずつ, ほんのわずかずつ.
  • at A's disposal:A〈人〉の自由になる(ように)
  • sufficient: «…するのに/…にとって» 十分な, 足りる
  • impressive:深い印象[感銘]を与える, 印象的な, 感動的な; 堂々とした

人のために時間を数分使うことは全く非生産的である。
何かを伝えるにはまとまった時間が必要である。
方向付けや計画や仕事の仕方について15分で話せると思っている者は、単にそう思い込んでいるだけである。
肝心なことをわからせ何かを変えたいのであれば、1時間はかかる。
なんらかの人間関係を築くには、はるかに多くの時間を必要とする。

To spend a few minutes with people is simply not productive.
If one wants to get anything across, one has to spend a fairly large minimum quantum of time.
The manager who thinks that he can discuss the plans, direction, and performance of one of his subordinates in fifteen minutes—and many managers believe this—is just deceiving himself.
If one wants to get to the point of having an impact, one needs probably at least an hour and usually much more.
And if one has to establish a human relationship, one needs infinitely more time.

  • get A across:〈人が〉【人に】A〈事〉を理解して[わかって]もらう
  • subordinate:部下
  • deceive:〈人〉をだます, 欺く, 惑わす、〖~ oneself〗 «…に関して/…と» (現実を受け入れずに都合の良いように)思い違いをする, 誤解する

知識労働者には自らの方向付けを自らさせなければならない。そのため、何が、なぜ期待されているのかを理解させなければならない。
自らが生み出すものを利用する人たちの仕事を理解させなければならない。
そのためには多くの情報、対話、指導が必要となる。ここでも時間が必要となる。

Since the knowledge worker directs himself, he must understand what achievement is expected of him and why.
He must also understand the work of the people who have to use his knowledge output.
For this, he needs a good deal of information, discussion, instruction—all things that take time.

  • achievement: 業績, 功績, 成果, 偉業, 手柄、達成, 完遂, 成就; 獲得, 習得

多少なりとも成果と業績を上げるには、組織全体の成果と業績に焦点を合わせなければならない。
したがって、自らの目を、仕事から成果へ、専門分野から外の世界、すなわち成果が存在する唯一の場所たる外の世界へ向けるための時間を必要とする。

The knowledge worker must be focused on the results and performance goals of the entire organization to have any results and performance at all.
This means that he has to set aside time to direct his vision from his work to results, and from his specialty to the outside in which alone performance lies.

  • entire:全体の; すべての, 全部の
  • set aside A:«ある目的のために/…するために» A〈金時間場所〉を取っておく

  ここでは、いわゆる「すきま時間の有効活用」といった時間管理の方法とは逆に、時間は細分化していては役に立たないと述べています。

  一人で行う報告書作成といった仕事でさえ、細切れではなくまとまった時間を作らないと下書きにすらならないと、大げさに表現しています。

  また、多分言外には、仕事を始める前に必要だと思っていた時間より遥かに多くの時間が必要になるということも言っているようです。

  90%完成していた仕事を100%に到達させるには、それまでにかけた時間と同じくらいの時間がかかってしまうことはよく経験します。かけた時間と仕事の進行は比例しないので、当初思っていたよりも多くの時間がかかることになります。仕事が進むにつれ「考える」時間の割合が増えていくので、中断するとまた最初からやり直しになり、さらに時間がかかるようになります。やり直しの無駄を生まないようにするためにも、まとまった時間を作るべきなのでしょう。

  組織で仕事をする以上、人との関わりは避けられません。同僚・上司・部下、取引先、委託先など様々な人たちと話をして仕事を進めていくわけですが、ここではゆとりが感じられるほどまとまった時間を用意することが、結局は近道になると言っています。

2013/5/1
renew:2015/9/11

必要とされる時間 the Time Demand on the Execute③

機械工や事務員など一般労働者の仕事を単純なものにすれば、知識労働者がなすべき仕事は増える。
仕事から知識を取り除くことはできない。
知識はどこかで、ずっと大きなまとまりとして使われなければならない。
知識労働者への時間の要求は決して減らない。

The easier we make it for rank-and-file workers, machine tenders as well as clerks, the more will have to be done by the knowledge worker.
One cannot “take knowledge out of the work.”
It has to be put back somewhere—and in much larger and cohesive amounts.
Time demands on the knowledge workers are not going down.

  • put back:〈人物〉を(元の場所に)戻す; A〈本来持っていた性質など〉を取り戻す; A〈機械〉を復旧させる
  • cohesive:結束[団結]した, まとまりのある; 密着性の, 〘物理〙凝集性の.

機械工は週に40時間働くだけである。すぐに35時間に短縮できる。
そして彼らは、かつては不可能だった豊かな生活を送れるようになる。
しかし、機械工の余暇の増大は知識労働者の増大によって償われなければならない。

Machine tenders now work only forty hours a week—and soon may work only thirty-five
and live better than anybody ever lived before, no matter how much he worked or how rich he was.
But the machine tender’s leisure is inescapably being paid for by the knowledge worker’s longer hours.

  • no matter:…であろうとも
  • inescapably:否が応でも; 必然的に.

今日、増大する余暇の過ごし方について困っているのは知識労働者ではない。(先進国において)
反対に、彼らの労働時間はますます長くなっており、時間への要求はさらに増大している。

It is not the executives who have a problem of spending their leisure time in the industrial countries of the world today.
On the contrary, they are working everywhere longer hours and have greater demands on their time to satisfy.


時間不足は改善されるどころか悪化している。
このような事態の重大な原因の一つは、高い生活水準というものが創造と変革を経済の前提にしているところにある。
創造と変革は時間に対して膨大な要求を突きつける。
短時間のうちに考えたり行ったりすることのできるのは、すでに知っていることを考えるか、すでに行っていることを行う時だけである。

And the executive time scarcity is bound to become worse rather than better.
One important reason for this is that a high standard of living presupposes an economy of innovation and change.
But innovation and change make inordinate time demands on the executive.
All one can think and do in a short time is to think what one already knows and to do as one has always done.

  • scarcity:(食料資源などの)不足, 欠乏(状況)
  • bound :バウンド、はねあがる、はね返る、
  • inordinate:並はずれた, とてつもない

これらの理由、すなわち組織からの要求、人に関わる問題からの要求、創造と変革からの要求のゆえに、エグゼクティブの時間の管理はますます重要となっていく。
しかしまず自らの時間がどのように使われているかを知らなければ、時間の管理について考えることはできない。

For all these reasons, the demands of the organization, the demands of people, the time demands of change and innovation, it will become increasingly important for executives to be able to manage their time.
But one cannot even think of managing one’s time unless one first knows where it goes.


  ルーチンワークや単純労働といった活動は、テイラーの科学的管理法によって、効率化し、時間短縮することができます。特に日本の高度成長期には「カイゼン」によって、他国よりも効率化されて、高い生活水準が得られるようになったのだと思います。

 そして、効率化された単純労働に従事する人はどんどん減少し、それに代わって知識労働に携わる時間と人が増えていきます。

 上記でドラッカーは、「高い生活水準は、イノベーションと変革の経済を前提としている」と述べています。そして、イノベーションと変革は、知識労働者に膨大な時間を要求する、としています。

 ドラッカーの主張を信じるならば、これら知識労働を行う人たちは、その時間をイノベーションと変革のために使わなくてはなりません。工業化社会のように、目の前の仕事を効率化することだけを考えていたのではいけない、ということになります。

create:2015/9/12

時間の使い方を診断する Time-diagnosis

時間の記録をとり、その結果を毎月見ていかなければならない。
最低でも年2回ほど、3、4週間記録を取る必要がある。
記録を見て日々のスケジュールを調整し、組み替えていかなければならない。
しかし半年も経てば、再び仕事に流されて些事に時間を浪費させられていることを知る。
時間の使い方は練習によって改善できる。
だが絶えず努力をしない限り、仕事に流される。

A good many effective executives keep such a log continuously and look at it regularly every month.
At a minimum, effective executives have the log run on themselves for three to four weeks at a stretch twice a year or so, on a regular schedule.
After each such sample, they rethink and rework their schedule.
But six months later, they invariably find that they have “drifted” into wasting their time on trivia.
Time-use does improve with practice.
But only constant efforts at managing time can prevent drifting.

  • at a stretch:一息で、一気に
  • invariably:変わることなく; きまって, いつも(always)
  • drift into:〖drift (+副詞)〗〈人が〉(目的もなく)さまよい進む, ふらふらする, 放浪する; (…に)いつの間にかなる
  • privent:〖prevent A from doing〗〈事人物が〉A〈人事〉が…するのを妨げる

第一にする必要のまったくない仕事、何の成果も生まない時間の浪費である仕事を見つけ、捨てることである。
全ての仕事について、まったくしなかったならば何が起こるかを考える。
何も起こらないが答えであるならば、その仕事は直ちにやめるべきである。

  1. First one tries to identify and eliminate the things that need not be done at all, the things that are purely waste of time without any results whatever.
    To find these time-wastes, one asks of all activities in the time records: “What would happen if this were not done at all?”
    And if the answer is, “Nothing would happen,” then obviously the conclusion is to stop doing it.
  • eliminate:〈人が〉 «…から» 〈不必要な物人〉を削除[排除]する, 除く;
  • obviously:当然ながら, 言うまでもないが;

第二に、他の人間でもやれることは何かを考えることである。
権限移譲が、自らの仕事を他の人間にやらせることを意味しているとすれば、それはそもそも正しいことではない。
誰もが自らなすべき仕事をするために報酬を支払われている。
あるいはよく説かれているように、何もしないエグゼクティブこそ最良のエグゼクティブであるから権限移譲が必要であるというならば、それは意味がないというだけにとどまららない。不真面目である。

  1. The next question is: “Which of the activities on my time log could be done by somebody else just as well, if not better?”
    If it means that somebody else ought to do part of “my work,” it is wrong.
    One is paid for doing one’s own work.
    And if it implies, as the usual sermon does, that the laziest manager is the best manager, it is not only nonsense; it is immoral.
  • ought to do:(道徳的判断社会的習慣期待として)…すべきである, …しなくては[でなければ]ならない; (忠告勧め提案として)…した方がいい
  • imply:〈事実出来事などが〉(たぶん)…を意味する; 〖~ (that)節〗(たぶん)…ということを示している
  • sermon:説教、小言

しかし他方、私が知る限り、時間の記録を見た後は、だれもが、自分でしなくともすむことは他の人間に任せるようになる。
なぜならば、時間の記録を一瞥しただけで、重要なこと、したいこと、自らの責任でなすべきことに使える時間のまったくないことがあまりに明白になるからである。

But I have never seen an executive confronted with his time record who did not rapidly acquire the habit of pushing at other people everything that he need not do personally.
The first look at the time record makes it abundantly clear that there just is not time enough to do the things the executive himself considers important, himself wants to do, and is himself committed to doing.

  • confront:〖be confronted with A/by A〗〈人が〉A〈問題困難危険など〉に直面する
  • acquire:〈知識技術習慣など〉を身につける; 〈好評など〉を得る
  • abundantly:豊富に、十分に、申し分なく、とても

通常使われている意味での権限移譲は間違いであって、人を誤らせる。
しかし自らが行うべき仕事を移譲するのではなく、自らが行うべき仕事に取り組むために他の人にできることを任せることは、成果を上げるうえで必要なことである。

“Delegation” as the term is customarily used, is a misunderstanding—is indeed misdirection.
But getting rid of anything that can be done by somebody else so that one does not have to delegate but can really get to one’s own work—that is a major improvement in effectiveness.

  • indeed:(いや)実際は, 事実は; 実はむしろ(in fact)
  • get rid of A:A〈いらない物〉を捨てる, 廃棄する; A〈不快な物事など〉を取り除く, 除去する; A〈(好まない)人など〉を追い払う; A〈不快な状況など〉を免れる, 脱する
  • improvement: 改善, 改良; 上達, 進歩

時間管理のための第三の方法は、自らがコントロールし、自らが取り除くことのできる時間浪費の原因を排除することである。人は、他人の時間まで浪費していることがある。
そのような時間の浪費が簡単にわかる兆候はなくとも、発見のための簡単な方法はある。
「あなたの仕事に貢献せず、ただ時間を浪費させるようなことを私は何かしているか」と定期的に聞けばよい。
答えを恐れることなくこのように質問できることが、成果を上げる者の条件である。

  1. A common cause of time-waste is largely under the executive’s control and can be eliminated by him. That is the time of others he himself wastes.
    There is no one symptom for this. But there is still a simple way to find out.
    That is to ask other people. Effective executives have learned to ask systematically and without coyness: “What do I do that wastes your time without contributing to your effectiveness?”
    To ask this question, and to ask it without being afraid of the truth, is a mark of the effective executive.
  • eliminate:〈不必要な物人〉を削除[排除]する, 除く;
  • coyness:はにかみ

不必要かつ非生産的な時間が多いことについては、誰もがよく知っている。しかし時間を整理することは恐れる。
間違って重要なことを整理してしまうのではないかと恐れる。
だがそのような間違いは直ちに訂正できる。整理し過ぎればすぐにわかる。

Many executives know all about these unproductive and unnecessary time demands; yet they are afraid to prune them.
They are afraid to cut out something important by mistake.
But this mistake, if made, can be speedily corrected. If one prunes too harshly, one usually finds out fast enough.

  • prune:〈余分なもの〉を取り除く; 〈費用人材など〉を切り詰める;
  • harshly:厳しく; 無情に; 耳[目]障りに; 荒く.

  前回ご紹介した「細切れではなく、中断のないまとまった時間を用意する」ために、時間の使い方を記録し、不要な活動を排除することが最初だと述べています。

  手紙や書類の1/4は捨てても問題ないと言われていますが、1966年当時の手紙は現在では電子メールでしょうか。

  電子メールは、リアルの手紙と違って簡単に宛先を増やすことができますから、手紙よりもっとたちが悪いかもしれません。

  第三の方法で紹介されている質問をしたときに「不要なメールは送らないでほしい」と言われないように気をつけないといけませんね。

  第二の方法(仕事を任せる)はとても効果があるのですが、任せられる人との信頼関係がないと、ただ仕事を丸投げしたと思われるかもしれません。他人に仕事を任せる場合には、いま自分が行うべき仕事はこれだということとセットで説明するのが良いかもしれません。

2013/5/2
renew:2015/9/13

時間浪費の原因を整理する Pruning the Time-Wasters①

ところがこれらの時間の浪費以外に、マネジメントと組織構造の間違いに起因する時間の浪費がある。
それらの間違いはあらゆる人の時間を浪費する。(拙いマネジメントはあらゆる人の時間を浪費する。特にマネージャーの時間を浪費する。)

Managers, however, need to be equally concerned with time-loss that results from poor management and deficient organization.
Poor management wastes everybody’s time—but above all, it wastes the manager’s time.

  • be concerned with:関心を持つ、注意を注ぐ、願う、~に関わる、~についてのものである
  • deficient:不十分な, 不完全な; 不備[欠陥]のある
  • above all:とりわけ、中でも

まず第一に、システムの欠陥や先見性の欠如からくる時間の浪費がある。
ここにおいて発見すべき兆候は、周期的な混乱、繰り返される混乱である。
二度起こった混乱を、三度起こしてはならない。

  1. The first task here is to identify the time-wasters which follow from lack of system or foresight.
    The symptom to look for is the recurrent “crisis,” the crisis that comes back year after year.
    A crisis that recurs a second time is a crisis that must not occur again.
  • identify:特定する、明確にする、確認する、同定する
  • foresight:先見の明, 計画性; 洞察力; 見通し, 予想
  • symptom:(良くない事態の)徴候, 兆し, しるし(sign).
  • recurrent:繰り返し起こる; 再発する, 頻発する; 循環する
  • crisis危機、難局、重大局面
  • year after year:毎年同じように
  • recur:再発する、繰り返す

繰り返し起こる混乱は予知できる。
したがって、予防するか、事務的に処理できる日常の仕事にルーティン化しなければならない。
ルーティン化とは、判断力のない未熟練の人でも天才を必要とする仕事を処理できるようにすることである。
経験から学んだことを体系的かつ段階的なプロセスにまめることである。

A recurrent crisis should always have been foreseen.
It can therefore either be prevented or reduced to a routine which clerks can manage.
The definition of a “routine” is that it makes unskilled people without judgment capable of doing what it took near-genius to do before;
for a routine puts down in systematic, step-by-step form what a very able man learned in surmounting yesterday’s crisis.

  • foresee:予知する、予見する
  • prevent:妨げる、防ぐ、邪魔する、予防する、防止する、先手を打つ、
  • reduce:減らす、まとめられる、減量する
  • clerk:(官庁会社銀行などの)事務員, 職員, 係
  • surmount:〈困難など〉を克服する, …に打ち勝つ(overcome)

良い工場は見た目には退屈である。混乱は予測され、対処の方法はルーティン化されている。そのため劇的なことは何も起こらない。
よくマネジメントされた組織は、日常はむしろ退屈な組織である。
そのような組織では、真に劇的なことは、昨日の尻拭いのためのカラ騒ぎではない。それは、明日を作るための意思決定である。

A well-managed factory is boring. Nothing exciting happens in it because the crises have been anticipated and have been converted into routine.
Similarly a well-managed organization is a “dull” organization.
The “dramatic” things in such an organization are basic decisions that make the future, rather than heroics in mopping up yesterday.

  • boring:〈事物人が〉【人にとって】退屈な, うんざりするような
  • anticipate:を予期[予想]する, …を見越す、…を見越して対策を講じる, …に備えておく;
  • heroic:英雄的な行動.〈人などが〉英雄の, 非常に勇敢な; 〈行為などが〉壮烈な, 立派な; 果敢な
  • mop up A:A〈液体など〉をふき取る、〈仕事など〉を片付ける.

  時間の浪費には四つの原因があると分析をしていて、上記はその一つ目です。

 人事異動、決算、棚卸しなど周期的に起きるイベントもあれば、欠品や重大クレームが起きたり資金ショートの危機に瀕したりなど不定期な出来事も考えられます。

 同じような混乱(現場では「おまつり」なんて言ったりします)があるのならば、それはシステムに欠陥があると言われています。未然に防ぐ方法を考えあらかじめ対処しておくことで、時間の浪費を防ぐべきだということでしょう。

2013/5/7
renew:2015/9/14

時間浪費の原因を整理する Pruning the Time-Wasters②

第二に、人員過剰からくる時間の浪費がある。
人が少なすぎるということはあり得る。人が少なければ仕事のできあがりはよくないかもしれない。だがそれは一般的な状況ではない。
むしろよく見られるのは、成果を上げるには人が多すぎ、したがって仕事をするよりも互いに作用し合うことにますます多くの時間が使われているという状況である。

  1. Time-wastes often result from overstaffing.
    A work force may, indeed, be too small for the task. And the work then suffers, if it gets done at all. But this is not the rule.
    Much more common is the work force that is too big for effectiveness, the work force that spends, therefore, an increasing amount of its time “interacting” rather than working.
  • work force:全従業員, 従業員社員、(国地域の)総労働人口, 労働力.
  • suffer:患う、悩む、苦しむ、見劣りする、質的に劣る
  • interact:交流する、付き合う、互いに作用し合う

人員過剰についてもかなり信頼できる兆候がある。
もし組織の上の方の人たちが時間をある程度以上、おそらくは一割以上を人間関係、反目、摩擦、担当、協力に関わる問題に取られているならば、人が多すぎることはほぼ確実である。
互いに仕事を邪魔している。
スマートな組織では、衝突することなく動く余地がある。始終説明しなくとも自分の仕事ができる。

There is a fairly reliable symptom of overstaffing.
If the senior people in the group—and of course the manager in particular—spend more than a small fraction of their time, maybe one tenth, on “problems of human relations,” on feuds and frictions, on jurisdictional disputes and questions of cooperation, and so on, then the work force is almost certainly too large.
People get into each other’s way. People have become an impediment to performance, rather than the means thereto.
In a lean organization people have room to move without colliding with one another and can do their work without having to explain it all the time.

  • fraction:(全体に対して)部分, 小片, 断片; ほんの一部, わずか;〖a ~; 副詞的に〗ちょっと, ほんの少し
  • feud:«…との/…間の/…についての» 争い; 反目, 確執
  • friction:«…の間の/…との» (意見の)不一致, 不和, あつれき、摩擦
  • jurisdiction:支配権、権力、権限の範囲
  • dispute:«…間の/…との/…に関する» 紛争, 争い, けんか; 論争, 議論, 口論
  • impediment: «…への» 妨げ, 障害(物)
  • lean:(合理化を進め)むだのない, スリムな〈組織団体など〉
  • collide:〈人意思などが〉 «…と/…に関して» 衝突する, (まったく)一致しない(clash)


  時間の浪費の二つ目は、人員過剰。

 現在の人員体制になっているのは、過去にそれが必要だった時があったからでしょう。しかし、その状況が現在まで続いているとは限りません。

 人の数が多ければ、そのコミュニケーションパスは階乗で増えていきますから、とてつもない時間がコミュニケーション活動のために割かれることになります。

 とはいえ、その仕事に責任を持たされている管理者は、一旦削減してしまった人員を増やすことに困難が伴いますから、人を離したがりません。

 したがって、組織全体で人を柔軟に動かすことができるという安心感を与えられないと、人員過剰による時間の浪費はなかなか減らせないということになります。

create:2015/9/16

時間浪費の原因を整理する Pruning the Time-Wasters③

第三に、組織構造の欠陥からくる時間の浪費がある。その兆候が会議の過剰である。

  1. Another common time-waster is malorganization. Its symptom is an excess of meetings.
  • mal-:悪い; 不快な; うまくいかない, 不完全な; 非…
  • an excess of A:多すぎるA

会議は元来、組織の欠陥を補完するためのものである。
人は、仕事をするか、会議に出るかである。
同時に両方を行うことはできない。
変化の時代にあっては至難なことだが、理想的に設計された組織とは会議のない組織である。

Meetings are by definition a concession to deficient organization.
For one either meets or one works.
One cannot do both at the same time.
In an ideally designed structure (which in a changing world is of course only a dream) there would be no meetings.

  • by definition:定義上, 当然のこととして
  • concession: 譲歩, 許容、許可, 認可,考慮、配慮
  • deficient:不十分な, 不完全な; 不備[欠陥]のある

会議を開くのは、仕事をする人たちが互いに協力しなければならないからである。
個々の状況において必要とされる知識や経験が、一人の頭では間に合わず、何人かの頭を合わせなければならないからである。

We meet because people holding different jobs have to cooperate to get a specific task done.
We meet because the knowledge and experience needed in a specific situation are not available in one head, but have to be pieced together out of the experience and knowledge of several people.


しかしなによりもまず、会議は原則でなく例外にしなければならない。
皆が会議をしている組織は、何事もなしえない組織である。
時間の四分の一以上が会議に費やされているならば、組織構造に欠陥があるとみてよい。

But above all, meetings have to be the exception rather than the rule.
An organization in which everybody meets all the time is an organization in which no one gets anything done.
Wherever a time log shows the fatty degeneration of meetings—whenever, for instance, people in an organization find themselves in meetings a quarter of their time or more—there is time-wasting malorganization.

  • fatty degeneration:脂肪変性
  • for instance:例えば、

第四に情報に関わる機能障害からくる時間の浪費がある。
さらに悪く、しかもよく見られるのが不適切な情報である。

  1. The last major time-waster is malfunction in information.
    Even worse, but equally common, is information in the wrong form.

  会議が多すぎる、会議ばかりで仕事が進まない、というのは、いろいろな組織で聞く話ではあります。

 ドラッカーは極端に表現することで気づきを促すので、会議のない組織が理想だと言っていますが、もちろんすべてのコミュニケーションをやめてしまえ、などというわけではありません。

 しかし、特に「□□定例会」などの名前で開催されている会議は要注意です。会議の目的が定期的に顔をあわせることになっていないでしょうか。議題に合わせて出席者を検討しない会議は、仕事をする時間を奪っている可能性がありますので、気をつけなければなりません。

 第四の「機能障害からくる時間の浪費」というのは、本文中では事例によって説明しています。

 大病院の入院患者を受け入れるためのベッド探しが、長年事務長の仕事になっていた。患者が退院したことは病棟の看護師は知っていても、入院窓口には翌朝にしか知らされていなかった。そのため、事務長が医師からの問い合わせに時間をかけてベッド探しをやっていたという事例です。

 これに対しては、病棟の看護師から会計窓口に回される伝票のカーボンコピーを1枚増やして、入院窓口に回すことで、事務長の無駄な時間を削減したということです。

 「今のままで困っていない」「これまでも同じようにやってきた」という言葉は、注意すべき言葉です。仕事の目的を考えずに無駄な仕事を続けている可能性を疑ってみる必要があります。

create:2015/9/17

自由になる時間をまとめる Consolidating “Discretionary Time”

実は、時間浪費の原因となっているものを容赦なく切り捨てていっても、自由になるまとまった時間はさほど多くはない。

It is not going to be a great deal, no matter how ruthlessly the executive prunes time-wasters.

  • no matter:いかに・・・であろうとも
  • ruthless:手段を選ばない; 容赦ない, 無情な, 無慈悲な; 〈決断などが〉断固とした
  • prune:取り除く、切り詰める、刈り込む

地位が上がるほど、管理のしようのない時間、しかもいかなる貢献ももたらさない時間の割合が大きくなる。
組織が大きくなるほど組織を機能させ生産的にするための時間ではなく、組織を維持し運営するための時間が多くなる。
成果を上げるには自由に使える時間を大きくまとめる必要がある。
したがって時間管理の最終段階は、時間の記録と仕事の整理によってもたらされた自由な時間をまとめることである。

The higher up an executive, the larger will be the proportion of time that is not under his control and yet not spent on contribution.
The larger the organization, the more time will be needed just to keep the organization together and running, rather than to make it function and produce.
The effective executive therefore knows that he has to consolidate his discretionary time.
The final step in time management is therefore to consolidate the time that record and analysis show as normally available and under the executive’s control.

  • proportion:割合
  • consolidate:を統合[合併]する。かためる、強固にする
  • discretionary:自由裁量の[による], 任意の

ほとんどの人は、 二次的な仕事を後回しにすることによって自由な時間を作ろうとする。
しかしそのようなアプローチではたいしたことはできない。
心の中で、 また実際のスケジュール調整の中で、 重要でない貢献度の低い仕事に依然として優先権を与えてしまう。

Most people tackle the job by trying to push the secondary, the less productive matters together, thus clearing, so to speak, a free space between them.
This does not lead very far, however.
One still gives priority in one’s mind and in one’s schedule to the less important things, the things that have to be done even though they contribute little.


まず初めに本当に自由な時間がどれだけあるかを計算しなければならない。
次に適当なまとまりの時間を確保しなければならない。
そして常に、生産的でない仕事がこの確保済みの時間を蚕食してはいないかと目を光らせなければならない。
前にも述べたように、仕事を刈り込みすぎるということはほとんど起こり得ないことを知らなければならない。

Effective executives start out by estimating how much discretionary time they can realistically call their own.
Then they set aside continuous time in the appropriate amount.
And if they find later that other matters encroach on this reserve, they scrutinize their record again and get rid of some more time demands from less than fully productive activities.
They know that, as has been said before, one rarely overprunes.

  • estimate:見積もる、推測する。
  • set aside:考慮しないで、取っておいて、別にして
  • appropriate:きちんと合った, 適切な, ふさわしい
  • encroach:侵害する、制限する、侵食する
  • scrutinize:…を詳しく調べる…をよく見る, じろじろ見る.
  • get rid of:を捨てる, 廃棄する,を取り除く, 除去する; を追い払う

時間は稀少な資源である。 時間を管理できなければ、何も管理できない。
その上時間の分析は、自らの仕事を分析しその仕事の中で何が本当に重要かを考える上でも、体系的かつ容易な方法である。
汝自身を知れとの昔からの知恵ある処方は、 儚い身の人間にとっては不可能なほどに困難である。
その気がある限り、 汝の時間を知れとの処方には誰でも従うことができる。その結果、誰でも貢献と成果への道を歩むことができる。

Time is the scarcest resource, and unless it is managed, nothing else can be managed.
The analysis of one’s time, moreover, is the one easily accessible and yet systematic way to analyze one’s work and to think through what really matters in it.
“Know Thyself,” the old prescription for wisdom, is almost impossibly difficult for mortal men.
But everyone can follow the injunction “Know Thy Time” if he wants to, and be well on the road toward contribution and effectiveness.

  • scarce:不足して, 十分にない, まれな, 珍しい
  • prescription:処方箋
  • mortal:命にかかわる, 致命的な,人間の(human); この世の

 時間をまとめる方法について本文中では、週に一度は家で仕事をするとか毎朝自宅で仕事をするという例が記載されています。

 日中のまとまった時間を確保する方法としては、「一人仕事の予定を入れてしまう」という方法があります。グループウェアを使っているなら自分の予定表に書き込んでしまうと、他の人からは「予定あり」と見えますから、時間を確保する確率は少しあがるでしょう。

  ただ、そうしていても常に気をつけていないと、大量の重要でないメール処理に追われてしまうなど、確保したはずの時間が食いつぶされてしまうので目を光らせておけ、という訳です。

2013/5/8
renew:2015/9/18