八つの習慣
私が65年間コンサルタントとして出会ったCEOのほとんどが、いわゆるリーダータイプでない人だった。
性格、姿勢、価値観、強み、弱みのすべてが千差万別だった。
外交的な人から内向的な人、頭の柔らかな人から硬い人、大まかな人から細かな人までいろいろだった。
Some of the best business and nonprofit CEOs I’ve worked with over a 65-year consulting career were not stereotypical leaders.
They were all over the map in terms of their personalities, attitudes, values, strengths, and weaknesses.
They ranged from extroverted to nearly reclusive, from easygoing to controlling, from generous to parsimonious.
- stereotypical leader : 典型的なリーダー
- all over the map : いたるところに散らばっている
- extroverted : 外交的性格の人、社交的な人
- reclusive : 隠遁者、世を捨てた
- easygoing : ゆったりとした, のんびりした, 気楽な, こせこせしない
- generous : 気前のよい, 金離れのよい, 寛大な
- parsimonious : けちな, 出し惜しみの
彼らが成果を上げたのは八つのことを習慣化していたからだった。
(1) なされるべきことを考える
(2) 組織のことを考える
(3) アクションプランを作る
(4) 意思決定を行う(に責任を持つ)
(5) コミュニケーションを行う(に責任を持つ)
(6) (問題ではなく)機会に焦点を合わせる
(7) 会議の生産性をあげる
(8) 「私は」ではなく「われわれは」を考える
What made them all effective is that they followed the same eight practices:
- They asked, “What needs to be done?”
- They asked, “What is right for the enterprise?”
- They developed action plans.
- They took responsibility for decisions.
- They took responsibility for communicating.
- They were focused on opportunities rather than problems.
- They ran productive meetings.
- They thought and said “we” rather than “I.”
第1章から終章までの本文は1966年(ドラッカー56歳)に書かれたものですが、この序章は2004年6月のハーバードビジネスレビューに掲載されたものですから、当初の著作から40年近くが経過しています。
序章では成果をあげる習慣を上記のように8つ列挙しています。しかし、1966年当時の著作では、①自分の時間を知る、②貢献について考える、③強みを生かす、④最も重要なことに集中する、⑤成果をあげる意思決定を行う、という5つの習慣について詳述しています。
一冊の本の中ですが、序章と第1章から後の記述に、数の上では矛盾があります。
昔の著作の誤りを40年後の論文で自ら正したというわけではないでしょう。また、どちらが正しくてどちらが誤っているという間違い探しをする必要はないと思います。
いずれも、ドラッカーの文章を読んで自らの行動に反映していく(実践する)ことで、次第に意識せずに成果を上げられるようになっていくのでしょう。
つまり、成果をあげる習慣を身につけることができるようになるのです。
create:2016/2/15
なされるべきこと、組織のことを考える
第一に身につけるべき習慣は、なされるべきことを考えることである。
何をしたいかではないことに留意してほしい。
なされるべきことを考えることが成功の秘訣である。
これを考えないならば、いかに有能であろうと成果をあげることはできない。
The first practice is to ask what needs to be done.
Note that the question is not “What do I want to do?”
Asking what has to be done, and taking the question seriously, is crucial for managerial success.
Failure to ask this question will render even the ablest executive ineffectual.
- crucial : 極めて重大な、決定的な、必要不可欠の
- ablest executive : 最も有能なエグゼクティブ
- ineffectual : 能力に欠ける、効果の上がらない
なされるべきことはほとんど常に複数である。
しかし成果をあげるには手を広げすぎてはならない。
一つのことに集中する必要がある。
The answer to the question “What needs to be done?” almost always contains more than one urgent task.
But effective executives do not splinter themselves.
They concentrate on one task if at all possible.
- contain : 含む、取り込んでいる、から成っている
- urgent : 緊急の、至急の、切迫した
- splinter : ~を裂く、こなごなにする
- if at all possible : 可能な限り、できるだけ
成果をあげるために身につけるべき第二の習慣、第一のものに劣らず大切な習慣が、組織にとって良いことは何かを考えることである。
Effective executives’ second practice—fully as important as the first—is to ask, “Is this the right thing for the enterprise?”
- enterprise : 企業、会社、事業、企画
この第二の習慣は、特に同族企業の人事において重要である。
同族企業が繁栄するには、同族のうち明らかに同族外の者よりも仕事ぶりにおいて勝る者のみを昇進させなければならない。
This second practice is especially important for executives at family owned or family run businesses—the majority of businesses in every country—particularly when they’re making decisions about people.
In the successful family company, a relative is promoted only if he or she is measurably superior to all nonrelatives on the same level.
- the majority of businesses in every country : すべての国で多数を占める企業
- relative : 親戚、親類、身内
- measurably : 目立って、かなり
- superior : 優れている、勝っている
組織にとって良いことは何かを考えても、正しい答えを得られるとは限らない。
いかに頭が良くとも、先入観にとらわれて間違いを犯すことはある。
しかしこれを考えないならば間違った結果になることは必定である。
Asking “What is right for the enterprise?” does not guarantee that the right decision will be made.
Even the most brilliant executive is human and thus prone to mistakes and prejudices.
But failure to ask the question virtually guarantees the wrong decision.
- guarantee : 保証する、確約する
- prone : 傾向がある、しがちな
- prejudice : 先入観、偏見、不利益、損害
- virtually : ほとんど、事実上、実際上
8つの習慣のうち最初の二つについて、述べられたセクションです。
「なされるべきことを考える」というのは、組織のトップから最前線の従業者個人まで共通しています。
トップの場合には「社会は我々の組織に何を求めているか」、ミドルマネジメントならば「周りの組織は、我々の部署に何を求めているか」、個人の場合には「周囲の人たちは私に何を期待しているか」という問いに置き換えられます。
この問いに対するたくさんの答えの中から、最初に手をつける最優先課題に集中することによって、成果を上げられる可能性が高まると述べています。
第二の習慣について、字面を追うと組織防衛せよという解釈も成り立ちますが、第一の習慣の後にあるということがキーポイントです。
「組織にとってよいこと」が「なされるべきこと」と対立する場合には、「なされるべきこと」を優先しなければなりません。そうでなければ、組織が存続することは社会に害悪を与えてしまうことになります。
「なされるべきこと」を優先すると「組織にとって悪いこと」になるのであれば、組織の方を変えることを考える必要があります。
組織は存続し続けなければなりません。組織が壊れてしまうと、そこで働く人はもちろん顧客、取引先、出資者、債権者など社会に多大なコストを強いることになりますので、「なされるべきこと」にマッチするように、組織を変えていく必要があります。
create:2016/2/15
アクションプランを作る
行動の前には計画しなければならない。
第一に、「今後一年半あるいは二年間、自分は何によって貢献すべきか」「いかなる成果をもたらすべきか」「それはいつまでにか」を考えなければならない。 (という問いによって望ましい成果を定義する。)
Before springing into action, the executive needs to plan his course.
First, the executive defines desired results by asking: “What contributions should the enterprise expect from me over the next 18 months to two years? What results will I commit to? With what deadlines?”
- spring into action : 〈人街などが〉にわかに活気づく; 〈機械などが〉急に動き出す
- define desired results : 望ましい成果を定義する
第二に、行動の制約条件を考えなければならない。
「倫理的に正しいか」「組織内で理解を得られるか」「法律的に問題ないか」「組織としてのミッション、価値観、方針に合っているか」を考えなければならない。
Then he considers the restraints on action:
“Is this course of action ethical? Is it acceptable within the organization? Is it legal? Is it compatible with the mission, values, and policies of the organization?”
- restraint : 制限事項、禁止条項
- ethical : 倫理の、道徳上の、道義にかなった
- regal : 適法の、合法的な、法律上の
- compatible : 適合して、両立して、互換性がある
アクションプランとは意図であって、絶対の約束ではない。
拘束ではない。
一つひとつの成功が新しい機会をもたらし、一つひとつの失敗が新しい機会をもたらすがゆえに、頻繁に修正していくべきものである。
The action plan is a statement of intentions rather than a commitment.
It must not become a straitjacket.
It should be revised often, because every success creates new opportunities. So does every failure.
- statement of intentions : 意図の表明
- commitment : 約束、公約、義務
- straitjacket : 拘束衣
- revise : 変える、改める、改訂する、修正する
加えてアクションプランには、期待と成果を照合するためのチェックポイントが必要である。
成果をあげるには、チェックポイントは二つ設けることが望ましい。
一つは中間点、例えば9カ月後である。
もう一つは終わりに近く、次のアクションプランの策定に入る前である。
In addition, the action plan needs to create a system for checking the results against the expectations.
Effective executive usually build two such checks into their action plans.
The first check comes halfway through the plan’s time period; for example, at nine months.
The second occurs at the end, before the next action plan is drown up.
アクションプランは時間管理の基準としても必要である。
時間こそ最も稀少で価値のある資源である。
Finally, the action plan has to become the basis for the executive’s time management.
Time is an executive’s scarcest and most precious resource.
- scarce : 不足して、十分にない、稀少な
- precious : 貴重な、高価な、かけがいのない
成果をあげる三つ目の習慣は、「アクションプランを作る」です。
個人の成果にせよ、トップマネジメントの成果にせよ、成果をあげるためには何かしらの行動が必要となりますが、行動の前には計画を立てろ、というわけです。
そのアクションプラン(行動計画)の中には、将来の特定の時点で期待通りに進んでいるのかどうかをチェックするポイント(計画時点の期待)を盛り込んでおくべきということです。
行動を起こす前にこれから起こることをすべてを見通して計画することなど不可能です。計画にある最初の行動を起こしたなら、その前には見えていなかった現実が突如現れたり、想定していなかった周りの変化が次のステップに進むことを阻害するでしょう。
そのため、「アクションプランは頻繁に修正すべきもの」と考えておきなさい、というわけです。特に、実行に移す初期の段階の方が修正の必要性が高いでしょうから、アクションプランそのものに進捗状況の確認と修正のタイミングを計画しておくと良いと思います。
上記の記述の中には、「9ヶ月」「1年半」「2年」といったちょっと中途半端な時間がでてきます。ほとんどの組織が1年という会計期間を持っていますが、あえて会計期間とずらすことによって、プランに対する会計(金)の影響を小さくしようとしたのではないかと思います。
create:2016/2/17
意思決定を行う
意思決定が意思決定たるためには、次の四つのことを定めなければならない。 (次のことを人々が知るに至るまで意思決定をしたことにはならない)
(1) 実行の責任者
(2) 日程
(3) 影響を受けるがゆえに決定の内容を知らされ、 (理解し、) 納得すべき人 (少なくともそれに強く反対しない人)
(4) 影響を受けなくとも決定の内容を知らされるべき人
A decision has not been made until people know :
- the name of the person accountable for carrying it out;
- the deadline;
- the names of the people who will be affected by the decision and therefore have to know about, understand, and approve it— or at least not be strongly opposed to it —and
- the names of the people who have to be informed of the decision, even if they are not directly affected by it.
- carry out : ~を実施する、行う、実行する、果たす
- affect : 影響する、変化をもたらす
- approve : 賛成する、同意する、認める、承認する
- at least not be strongly opposed to it : 少なくともそれに強く反対しないこと
- inform : 通知する、伝える、報告する
(訳文なし)成果をあげる人はこのことを知っていて、人事に関する意思決定の結果を(6ヶ月から9ヶ月後に)チェックしている。
人事がうまくいかなかった時には、動かされたものを無能と決めつけてはならない。
人事を行った者が間違っていたにすぎない。
マネジメントに優れた組織では、人事の失敗は異動されされたものの責任ではないことが理解されている。
Effective executives know this and check up (six to nine months later) on the results of their people decisions.
If they find that a decision has not had the desired results, they don’t conclude that the person has not performed.
They conclude, instead, that they themselves made a mistake.
In a well-managed enterprise, it is understood that people who fail in a new job, especially after a promotion, may not be the ones to blame.
- conclude : 結論づける、断定する
- be to blame : 責めを負うべきである, 責任がある
重要な仕事をこなせない者をそのままにしておいてはならない。動かしてやることが組織と本人に対する責任である。
仕事ができないことは本人のせいではない。だが動かしてやらなければならない。
Executives also owe it to the organization and to their fellow workers not to tolerate nonperforming individuals in important jobs.
It may not be the employees’ fault that they are underperforming, but even so, they have to be removed.
- owe : ~する義務がある、責任がある、借りがある
- tolerate : 許す、大目にみる、我慢する
意思決定の定期的な見直しは、自己開発の (強力な) 手段ともなる。
意思決定の結果を期待に照合するならば、自らが強みとするもの、改善すべきもの、知識や情報の欠けているものが明らかになる。
自らの偏りも明らかになる。
A systematic decision review can be a powerful tool for self-development, too.
Checking the results of a decision against its expectations shows executives what their strengths are, where they need to improve, and where they lack knowledge or information.
It shows them their biases.
- bias : 偏見, (悪い)先入観 «against» ; «…への» 偏った好み, ひいき
知識労働者とは、自らの専門分野、例えば税務については他の誰よりも知っているべきものであり、その意思決定は組織全体に大きな影響を与えるはずのものである。
したがって意思決定の能力は、組織のいかなるレベルにおいても、致命的に重要なスキルであるといわなければならない。
知識を基盤とする組織では、このことを周知させておくことが特に重要である。
Knowledge workers are supposed to know more about their areas of specialization—for example, tax accounting—than anybody else, so their decisions are likely to have an impact throughout the company.
Making good decisions is a crucial skill at every level.
It needs to be taught explicitly to everyone in organizations that are based on knowledge.
- be supposed to do : …することになっている, …しなければならない
- throughout : …のあちらこちらに, …の至る所に, …の隅から隅まで
- crucial : きわめて重大な、決定的な、必要不可欠の
- explicitly : 明白に、はっきりと、あからさまに
意思決定すべき時に必ず入れておかなければならないのは、上記で挙げられている四つの項目ですが、このセクションで繰り返し出てくるのが「見直し(review)」です。
意思決定する(decide)→実行する(act)→見直す(review)→修正する(correct)という順に実行し、特に見直した後の修正をためらうなということです。
自分の強みを知るためにも、「明日を支配するもの」の中でフィードバック分析しかないと断定しています。
create:2016/2/20
コミュニケーションを行う
成果をあげるには、アクションプランを理解してもらい、情報ニーズを理解してもらわなければならない。
特にアクションプランについては、上司、部下、同僚に示し、意見を聞いておかなければならない。
同時に、自分がいかなる情報を必要としているかという情報ニーズについても理解してもらわなければならない。
Effective executives make sure that both their action plans and their information needs are understood.
Specifically, this means that they share their plans with and ask for comments from all their colleagues—superiors, subordinates, and peers.
At the same time, they let each person know what information they’ll need to get the job done.
- colleague : 同僚、仲間
- peer : 同等の人、同輩、友達
チェスター・バーナードが1938年に著した『経営者の役割』は、組織の一体性は所有権や命令ではなく、情報によってもたらされることを明らかにした。
ところが未だに、情報とは、経理などの情報のスペシャリストが扱えば良いとの考えが残っている。
その結果、かえって使いもしない膨大なデータを手にしつつ、必要な情報は手にしていないという状況になっている。
この状況を打破するには、必要な情報を明らかにし、求め続けるしかない。
We all know, thanks to Chester Barnard’s 1938 classic The Functions of the Executive, that organizations are held together by information rather than by ownership or command.
Still, far too many executives behave as if information and its flow were the job of the information specialist—for example, the accountant.
As a result, they get an enormous amount of data they do not need and cannot use, but little of the information they do need.
The best way around this problem is for each executive to identify the information he needs, ask for it, and keep pushing until he gets it.
- hold together : 団結する、首尾一貫している、一つにまとまっている
- behave : 振る舞う、行動する
- enormous : 非常に大きい、莫大な
アクションプランを決めて、誰が実行するのかを決めたら、その当事者とその決定によって影響を受ける人に正しく伝えて理解してもらわなくてはなりません。
コミュニケーションについては、本書の中でも第3章の中で取り上げていますし、「明日を支配するもの」の中でも取り上げています。
「部下は上司が言うことではなく、自分が聞きたいことを聞き取る。(He will hear what he expects to hear rather than what is being said.)」という記述が第3章に出てきます。
聞き手の理解できる言葉で、聞き手の理解できる方法でなければ伝わらないかもしれない、と考えておくべきですし、伝わったかどうかを確認するためにも、フィードバックを計画の中に組み込んでおく必要があるというわけです。
create:2016/3/20
機会に焦点を合わせる
まず何よりも、変化を脅威ではなく機会としてとらえなければならない。
特に次の七つの状況を精査しなければならない。
(1) 自らの組織と競争相手(あるいはその産業)における予期せぬ成功と失敗
(2) 市場、プロセス、製品、サービスにおけるギャップ
(3) (組織の内外、産業の内外における)プロセス、製品、サービスにおけるイノベーション
(4) 産業構造と市場構造における変化
(5) 人口構造における変化
(6) 考え方、価値観、知覚、空気、意味合いにおける変化
(7) 知識と技術における変化
Above all, effective executives treat change as an opportunity rather than a threat.
Specifically, executives scan these seven situations for opportunities:
- an unexpected success or failure in their own enterprise, in a competing enterprise, or in the industry;
- a gap between what is and what could be in a market, process, product, or service;
- innovation in a process, product, or service, whether inside or outside the enterprise or its industry;
- changes in industry structure and market structure;
- demographics;
- changes in mind-set, values, perception, mood, or meaning; and
- new knowledge or a new technology.
問題に圧倒されて機会を見失うことがあってはならない。
ほとんどの組織の月例報告が第1ページに問題を列挙している。
しかし、第1ページには機会を列挙し、問題は第2ページするべきである。
よほどの大事件でも起こらないかぎり、問題を検討するのは、機会を分析しその利用の仕方を決めてからにすべきである。
Effective executives also make sure that problems do not overwhelm opportunities.
In most companies, the first page of the monthly management report lists key problems.
It’s far wiser to list opportunities on the first page and leave problems for the second page.
Unless there is a true catastrophe, problems are not discussed in management meetings until opportunities have been analyzed and properly dealt with.
- make sure : 確かめる、気をつける、確保する
- overwhelm : 圧倒する、困惑させる、覆いつくす
- far wiser : はるかに賢明である
- catastrophe : 大災害、災難、不幸
- properly : 適切に、きちんと、徹底的に
- deal with : 処置する、取り扱う、論じる、対処する
一流の人材に、問題ではなく機会を担当させなければならない。
そのための方法の一つが、半年に一回、機会のリストと仕事のできるもののリストを持ち寄ることである。
これらのリストを二つの大きなリストにまとめる。そして最大の機会を最高の人材に担当させる。
Effective executives put their best people on opportunities rather than on problems.
One way to staff for opportunities is to ask each member of the management group to prepare two lists every six months—a list of opportunities for the entire enterprise and a list of the best-performing people throughout the enterprise.
These are discussed, then melded into two master lists, and the best people are matched with the best opportunities.
- meld : 混ぜる、合併させる
こで列挙されている七つの状況は、「イノベーションと企業家精神」の中で述べられているイノベーションのための七つの機会とほぼ同じです。
起こりやすいものから起こりづらいものへという順番で並んでいます。当然起こりやすいものから取り組んだ方が、起こりづらいものに取り組むよりも容易にイノベーションを成し遂げることができます。
本章の「アクションプランを立てる→意思決定する→コミュニケーションを図る」という項目の次にイノベーションについての記述を持ってきたのは、ちょっと理解しづらいところです。
イノベーションの機会を探るというのは、組織の基本的機能として、最初から取り組んでおかなくてはならないとされているからです。(「現代の経営」第5章(企業はマーケティングとイノベーションという二つだけの機能を持つ。))
あえてこの場所にイノベーションについての記述を差し込んだのは、アクションプランを実行する段階に入ると日常業務に埋没しがちになる、短期的成果だけを追い求めがちになるので、中長期的に組織が目指す方向の修正を図る(顔を上げて丘の上を見る「現代の経営」第27章)ことを意識させるため、仕事の中に組み込んでおくことが必要だと言われているのではないかと推測します。
create:2016/3/20
会議の生産性をあげる
成果をあげるには、会議の生産性をあげなければならない。
もちろん会議は懇談ではなく仕事の場としなければならない。
会議の生産性を上げるには、事前に目的を明らかにすることが必要である。
目的が違えばそのための準備もそのあとの成果も違うはずだからである。
If they are to be effective, executives must make meetings productive.
They must make sure that meetings are work sessions rather than bull sessions.
The key to running an effective meeting is to decide in advance what kind of meeting it will be.
Different kinds of meetings require different forms of preparation and different results.
- bull session : ざっくばらんな討論
- in advance : 前もって、あらかじめ
- preparation : 準備すること
- 一人による報告 ー 発言はその報告に関するものに絞る。
- 数人あるいは全員による報告 ー 発言は(全く行わないかあるいは)それらの報告に関する(質問と説明する)ものに絞る。報告はあらかじめ配布しておく。一人当たり15分以内に制限しても良い。
- 会議主催者への報告 ー 会議主催者は発言を質問にとどめる。まとめは行ってもよいが意見は言わない。
- A meeting in which one member reports. - Nothing but the report should be discussed.
- A meeting in which several or all members report. - Either there should be no discussion at all or the discussion should be limited to questions for clarification. Alternatively, for each report there could be a short discussion in which all participants may ask questions. If this is the format, the reports should be distributed to all participants well before the meeting. At this kind of meeting, each report should be limited to a preset time—for example, 15 minutes.
- A meeting to inform the convening executive. - The executive should listen and ask questions. He or she should sum up but not make a presentation.
- clarification : 解明、説明
- participant : 参加者、関係者
- distribute : 分配する、配布する、分かち合う
会議の生産性を上げるにはフォローが必要である。
この点に関しては、私の知っている最高の経営者アルフレッド・スローンが名人級だった。
委員会では冒頭必ず会議の目的を明らかにした。
あとは耳を傾けた。
メモはとらず、分からない事を聞く以外は発言もしなかった。
部屋に戻って直ちにメモを書き、そのコピーを出席者全員に届けさせた。
メモでは結論と宿題を明らかにした。
担当者と期限を示した。
それらのメモ一つひとつが名文だった。スローンはこうして傑出した経営者となった。
Good follow-up is just as important as the meeting itself.
The great master of follow-up was Alfred Sloan, the most effective business executive I have ever known.
At the beginning of a formal meeting, Sloan announced the meeting’s purpose.
He then listened.
He never took notes and he rarely spoke except to clarify a confusing point.
Then he immediately wrote a short memo and sent a copy of the memo to everyone who’d been present at the meeting.
In that note, he summarized the discussion and its conclusions and spelled out any work assignment decided upon in the meeting.
He specified the deadline and the executive who was to be accountable for the assignment.
It was through these memos—each a small masterpiece—that Sloan made himself into an outstandingly effective executive.
- clarify : 明らかにする、わかりやすくする、はっきりする
- confuse : 困惑させる、まごつかせる、混同する
- accountable for the assignment : 任務に対する責任
組織の中で地位が上に行くほど、会議に出席する時間が長くなる傾向にあるのは、どの組織にも共通していると思います。
会議の生産性を考える上で、上記のように会議の冒頭で目的を明らかにし、期待する成果を共有できると、参加者を少しでも動機づけることができ、生産性が上がるのではないかと思います。
定期的に設定されている会議は要注意です。あらかじめ出席者の予定を確保できますし、アポイントを取る手間が省けるというメリットはあるものの、それによって効率化されるのは会議の日時を設定する仕事をする人だけです。
(出席者の人数)×(会議時間)の経営資源を投入していることを忘れずに、定例会議であってもその都度成果を求めるようにしていくべきなのでしょう。
create:2016/3/20
「私は」ではなく「われわれは」を考える
もう一つ身につけるべき習慣が、「私は」とは言わずに、「われわれは」と考え、「われわれは」と言うことである。
最終責任は自らにあることを知らなければならない。最終責任とは、誰とも分担できず、誰にも移譲できないものである。
トップが権威をもちうるのは、自らのニーズと機会ではなく、組織のニーズと機会を考えるからである。
簡単なことのように聞こえるがそうではない。しかも厳格に守らなければならない。
The final practice is this: Don’t think or say “I.” Think and say “we.”
Effective executives know that they have ultimate responsibility, which can be neither shared nor delegated.
This means that they think of the needs and the opportunities of the organization before they think of their own needs and opportunities.
This one may sound simple; it isn’t, but it needs to be strictly observed.
- delegate : 任せる、委任する、権限を譲る
- strictly : 厳しく、厳格に、厳密に
- observe : 守る、従う、観察する、気づく
ここまで、成果を上げるための八つの習慣について述べてきた。
もう一つおまけを加えたい。
あまりに重要なことなので、原則に格上げしたいくらいである。
「聞け、話すな」である。
We’ve just reviewed eight practices of effective executives.
I’m going to throw in one final, bonus practice.
This one’s so important that I’ll elevate it to the level of a rule:
Listen first, speak last.
- throw in : おまけにつける、差しはさむ、投入する
- elevate : 昇進させる、上昇させる、持ち上げる
成果を上げるには、性格、強み、弱み、価値観、信条はいかようであってもよい。
なされるべきことをなすだけでよい。
確かに生まれつき成果をあげるという人たちもいる。
しかしわれわれは生まれつきの才能に頼るわけにはいかない。
成果をあげることは習慣である。
したがって、他の習慣と同じように身につけることができるものである。そして身につけなければならないものである。
Effective executives differ widely in their personalities, strengths, weaknesses, values, and beliefs.
All they have in common is that they get the right things done.
Some are born effective.
But the demand is much too great to be satisfied by extraordinary talent.
Effectiveness is a discipline.
And, like every discipline, effectiveness can be learned and must be earned.
- differ : 異なる、違う、相違する
- in common : 同じように、共同で、共通に
- extraordinary : 並外れた、ずば抜けた、驚くべき
- discipline : 訓練、しつけ、規律、学科、学習
- earn : 獲得する、儲ける、稼ぐ、もたらす
序章で述べられている8つの習慣の最後が、「(われわれは)と(考え)(言う)」ことです。
「他の人はどう思っているかわからないが、私はこう考える」ということは、簡単ですし、ある意味無責任ということもできます。
「われわれは」を考え、「われわれは」と口にすることで、口にする人に責任感を持たせ、その言葉を聞く人にはチームへの所属感と貢献意欲をあげる効果をもたらすと考えたのではないでしょうか。
「聞け、話すな」というのは、強烈で有名なフレーズですが、原文を直訳すると「最初は聞きなさい、最後に話しなさい」ですから、話さないまま終わるべしと言っているわけではありません。
この序章では「習慣」について述べられていますが、最後の文にある「成果をあげることは習慣」はdisciplineの訳語で、どちらかというと「訓練」と言った方がしっくりくるように思います。
継続して練習し、失敗を繰り返しながら身につけていく、というニュアンスで捉えると良いと思います。
create:2016/3/23