2章 社会的機能および一般教養としてのマネジメント
成功がもたらした問題(9)
マネジメントの役割は、(共通の目標)(共通の価値観)(適切な組織)(訓練と研鑽)によって、人々が共同で成果を上げられるようにすること
知識を生産資源に変える(10)
「異なる技能と知識を持つ人たちの共同作業によって共通の目的を達成させる方法」など知られていなかった。
高度の知識は常に専門化している。単独では何物も生み出せない。組織抜きで成果をあげられるものはいない。
それらの知識や知識労働者に成果をあげされることができるものが、マネジメントである。
教育訓練がもたらした大変化(12)
教育訓練は戦時の必要に迫られて発展し、低賃金国が賃金を据え置いたまま生産効率を上げることに成功した。
第1次大戦中、未熟練の人間を生産的な労働者に育てる必要性から、テイラーの科学的管理法【(仕事を分析)→(作業に分解)→(組み立てなおす)】を応用して教育訓練を行った。
マネジメントによって生み出されてきたもの(1920年代から1930年代)
- 分権化
- ガントチャートからは計画化の手法
- 分析と統計
- マーケティング
- オートメ化
- チーム制
- 品質管理サークル
- 情報型組織
知識を仕事に適用する(14)
テイラーの言葉を使うならば、マネジメントの革新は、より激しく働くことを、より賢明に働くことに代えた。
第2次大戦後、マネジメントが独立した機能として認識され、研究、発展させるべきものとされた。
マネジメントは、企業だけのものではなく、多様な知識と技能を持つ人たちが共同して働く事業すべてのためのものである。
目標と戦略を明らかにし、自らが提供するサービスをマーケティングし、成果を評価し、人を育てなければならない。
マネジメントと起業家精神はコインの表裏(15)
マネジメントは体系としても仕事としても大きく発展し、起業家精神とイノベーションの領域を含むようになった。
イノベーションの欠如こそ、既存の組織が凋落する最大の原因であり、マネジメントの欠如こそ、新しい事業が失敗する最大の原因である。
イノベーションと起業家精神は、新しい事業とともに、既存の組織にも適用されるもの、あらゆる機関に適用されるもの。
マネジメントが直面する問題(16)
マネジメントが直面する重大な問題
- マネジメントは、だれに責任を負うべきか
- いかなる責任を負うべきか
- その力の根拠は何か
- 正当性の根拠は何か
マネジメントは、与えられた任務において成果を上げる責任を負う
- 成果はいかに評価すべきか
- いかに実現すべきか
- マネジメントは、何に責任を負うべきか
マネジメントとは何か
1.マネジメントとは、人間に関わることである。
その機能は、人が共同して成果を上げることを可能とし、人の強みを発揮させ弱みを無意味なものにすることである。
2.マネジメントは、 それぞれの国、それぞれの土地の文化と深い関わりを持つ。
マネジメントが直面する基本的な問題の1つは、自らのマネジメントに組み込みうる独自の伝統、歴史、文化を判別することである。
3.マネジメントの責務は、目的、価値観、目標について検討し、決定し、組織の成員に示すことである。
あらゆる組織がその成員に対し、仕事についての共通の価値観と目標を持つことを要求する。
4.マネジメントは、組織とその成員を成長させなければならない。
組織はすべて学習と教育のための機関である。 訓練と啓発に終わりはない。
5.意思の疎通と個人の責任が確立していなければならない。
組織の成員全てが自らの目標についてよく考え、皆がそれを理解しているか確かめなければならない。 期待されているものについても、それを理解しているか確かめなければならない。
6.成果の評価基準は、産出量や利益だけではない。
マーケティング、イノベーション、生産性、人材育成、財務状況等の全てが、組織の成果として、また組織の存続に関わる問題として重要である。
7.組織にとって、成果は常に外部に存在する。
組織の内部には、コストが発生するに過ぎない。
マネジメントは人間学である
マネジメントとは仕事である。その成否は結果で判定される。すなわち、それは技能である。
しかし同時に、マネジメントは人に関わるものであり、その価値観や成長に関わるものである。すなわち、それは人間学としての人文科学である。
マネジメントとは人間の心、すなわち人間の本質に関わるものである。
したがって、伝統的な意味におけるリベラルアート、すなわち一般教養である。
かくしてマネジメントたるものは、心理学、哲学、倫理学、経済学、歴史など、人文科学、社会科学、自然科学の広い分野にわたる知識と洞察を身に付けなければならない。